日本エネルギー会議

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責任あるエネルギー・環境政策を実行するときだ

前民主党政権が打ち出した「2030年代原発稼働ゼロ」方針を発端に混迷を続けてきた我が国のエネルギー・環境政策は、安倍晋三政権発足2年半を経て全体像がほぼまとまった。

最も注目された2030年の電源構成(エネルギーミックス)は、4月28日の総合資源エネルギー調査会(経済産業相の諮問機関)長期エネルギー需給見通し小委員会に経済産業省が政府案を提示、了承された。電源比率は、原子力発電20~22%▽再生可能エネルギー22~24%▽液化天然ガス(LNG)27%▽石炭26%▽石油3%―とし、昼夜を問わず一定規模の安定的発電を行う原発や石炭火力などのベースロード電源比率は56~58%程度を確保する内容。「稼働原発ゼロ」が続く現在は化石燃料に依存する火力発電が全発電量の9割近くを占めているが、省エネルギーの推進を基本に置き、原発の一定規模の再稼働、多様な再生エネの拡大で化石燃料依存度を引き下げるというバランス重視の比率に落ち着いた。

◆温室効果ガス削減は2013年比で26%削減
一方、こうしたエネルギーミックスの目標によって、二酸化炭素(CO2)を中心とした温室効果ガス排出量を2030年に2013年比26.0%削減する政府目標案が4月30日の経済産業、環境両省の合同審議会に提示され、了承を得た。いずれも与党協議などを経て5月中に最終決定され、6月7日からドイツで開かれる主要7カ国首脳会議(G7サミット)で安倍首相が正式表明する見通しだ。

電源構成における原発の一定規模確保は、日本の高い原子力技術を維持・向上するとともに、エネルギー自給率の低い我が国のエネルギー安全保障に貢献するものとして、必要性が確認されたと理解できる。ただし、再生エネについては、2012年の固定価格買取制度(FIT)導入後に起きた「太陽光発電バブル」などの問題点克服が必要となる事実を忘れてはならない。非現実的な「原発ゼロ」主張で漂流した日本のエネルギー・環境政策は、実行段階を迎えるこれからが正念場と認識するべきであろう。

◆原発再稼働の遅れを検証し、「60年運転」やリプレースも具体的視野に
2030年の電源構成目標を実現するには、多くの課題がある。原発に関しては、原子力規制委員会による「安全審査」の行方が第一にあげられる。新規制基準に基づく審査に当初見通しよりもはるかに長い期間がかかっており、新基準が施行されて2年近くが経過するのに、まだ、1基の原子炉も再稼働していない。このペースで長期間にわたる審査が続けば、目標発電量を確保できるか疑問視する専門家も多い。規制委・規制庁は、より効率的な審査を進めるために、具体的な対応策をとる必要がある。

また、「40年運転ルール」を超えて「60年運転」を目指す原発もあり、その審査も不透明性が残る。規制委は独立性の高い「3条委員会」ではあるが、国の基本政策を無視して一人歩きする行政機関はあり得ない。合理的な審査に本腰で取り組むべきであり、設置法の附則に盛り込まれている「発足3年後の見直し」を真摯に受け止め、政治も対応策の検討を着実に進めなければならない。

さらに、2030年目標には原発のリプレース(既存原発敷地内での建て替え)や新増設は盛り込まれていないが、原子力技術の進展を考慮、特にリプレースには本格的に取り組むように求めたい。

◆太陽光、風力発電には「自立性」が求められている
再生エネの内訳をみると、太陽光発電が7.0%程度、風力発電が1.7%程度、水力発電8.8~9.2%程度、バイオマス発電3.7~4.6%程度、地熱発電1.0~1.1%程度。全体として22~24%を目標にしたが、2013年度実績に比べると2倍強。このうち、太陽光と風力は気象条件により発電量が変動する不安定電源である。

総合資源エネルギー調査会発電コスト検証ワーキンググループで検討を重ねた試算によると、事業用太陽光は24.3円/kWh、陸上風力が21.9円/kWh。「最も安価な電源」とされた原子力の10.1円以上/kWhに比べてかなり高コストであり、なおかつ、電力の安定供給のためにはバックアップ電源や蓄電機能の充実、送電網の整備が欠かせない。

「再生エネの理想郷」と脱原発論者が持ち上げるドイツでは、再生エネ導入による電気料金上昇やバックアップに使われる火力発電に再生エネの“便利屋”としての性格が強まり、採算が取れないとして撤退を検討するケースが生まれるなど、影の部分が目立つ昨今だ。

こうした現実を直視すると、太陽光や風力といった不安定電源に大きな期待を寄せることの危うさは常に意識しておく必要がある。「2050年に再生エネ比率80%」を目指すドイツだが、2014年の国内総発電量の電源別構成比は褐炭火力25.4%、石炭火力17.8%、原子力15.8%(注:9基の原子炉はまだ稼働中)、ガス9.5%、風力9.1%、太陽光5.7%である。

「ドイツは原発を止めても再生エネで対応出来ている」という主張が、今でも脱原発派の“教典”のようになっているが、事実誤認でしかない。いざとなれば、欧州全体の送電網を活用して他国と電力を輸出入できるドイツと島国の日本とでは地政学的条件が全く異なるという点も認識しておくべきだ。

こうした事実を十分に把握し、太陽光や風力発電を「自立可能な電源」にしていく強い期待がエネルギーミックス目標に込められていることを無視して、エネルギー安全保障と温室効果ガス削減に再生エネが寄与するシナリオは描けない真実を見過ごしてはいけない。

曲折を経たが、議論は十分に尽くされた。政府は責任あるエネルギー・環境政策を、実行に移さなければならないときだ。

2015.5.1
日本エネルギー会議事務局

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