モーリー ロバートソン

世界基準のエネルギー安全保障

モーリー・ロバートソン
国際ジャーナリスト、DJ、ラジオパーソナリティー、ミュージシャン

―アメリカのエネルギー安全保障について
アメリカは、安全保障を包括的に考えます。軍事的な安全保障をベースとした経済エネルギーという考え方です。例えばシェール革命。アメリカのシェール革命は、中東への石油依存を軽減するという意味でコストパフォーマンスに優れています。掘削コストと国益を比べた結果、これはやるしかないと。環境的に危険だという警鐘があれだけ打ち鳴らされているにも関わらず、採掘し続けているのは、石油価格を全体的に下げられるという経済的安全保障と、いざ中東で紛争が起きて、中東からのエネルギー供給が途絶えた時に、自給自足でやっていけるという地政学的安全保障。
つまり、中東への関与が減れば、テロを含め、中東情勢に巻き込まれにくくなります。政治に関与する度合いが薄ければ薄いほど、緊張は緩和できるということです。最後にこれが非常にアメリカ的な考え方で、インセンティブとして輸出国になりたい。「サウジアラビアに独占させたくない。自分たちも輸出国になって、サウジアラビアが今まで受けてきた恩恵に肖りたい」と。

―欧州については
ロシアがキーマンだと思います。
今はギリシャ問題もあって混迷していますが、エネルギーに関していえば、ウクライナ問題がありました。ロシアのウクライナ侵攻に対して、EUが積極的に関与しないのは、ガスパイプラインの問題です。EUがロシアを刺激するようなことをすれば、ロシアはガスの供給を止めます。それで一番困るのはドイツです。ロシアからの潤沢なエネルギーの供給があってこそ、脱原発・再エネ推進というエネルギー政策が成立するのです。軍事を含めた地政学的な外交と、エネルギー問題は切り離せません。

―中国については
中国は年々エネルギー消費量が増えて、石炭火力だけでは対応出来なくなっています。その結果、原発を新設しています。ところが、中国はそれだけではない。地政学的にも立ち回ります。尖閣諸島や南沙諸島等、海底資源があると判断すれば、どこへでも海洋進出を進めます。
また、中国は先進国に比べて、産油国から高い価格で石油を購入しているという理由から、小さな産油国に個別に話をつけに行きます。世界から経済制裁を受けている独裁政権国家や、内乱が絶えないような紛争地域から石油を購入するわけです。急激な経済成長を遂げるためには、なりふり構っていられません。原発建設に関しても同様です。他にオプションがない。いいか悪いの問題ではないのです

―日本はこれからどう対応すべきでしょうか?
日本は防衛をアメリカにアウトソースし、軍事とエネルギーの安全保障を個別に考えています。そこが国際標準からすると特異点。第二次世界大戦後の日本は、今日まで紛争には巻き込まれませんでしたが、隣国の中国は、エネルギーと軍事と経済の安全保障が一体化して、アメリカナイズしていますから、私は切り離して考えるのは危険だと思います。
エネルギーと軍事と経済を切り離した思考は、東アジアにおいても破綻する可能性はあると思います。エネルギー安全保障というものは、エネルギー単体で捉えるのではなく、包括的に一筆書きの考え方をするべきです。自国のことだけを考えていてはいけません。システムとしてグローバルな視点で検討すべきです。

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