日本エネルギー会議

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廃炉現場からの便り

富岡町から毎月「福島県/富岡町からの広報誌在中」と記した封筒が避難先住所に届く。同封されているもののひとつに「福島第一原子力発電所および福島第二原子力発電所の状況に関するお知らせ」と題した両面カラー印刷の紙2枚がある。これは東京電力が作成し、地元の町村に依頼して県と町村からの広報誌などとともに各世帯に送られているものだ。

第一原発はA3で、第二原発はA4。第二は冷温停止中だが、第一原発は廃炉をしているために記載される事項も多い。内容に関する問い合わせ先は第一が復興推進室、第二が発電所の企画広報グループとなっているので、別々に作成されているようだ。

福島第一原発からのお知らせ

帰還するかしないかは別として、住民は原発がどのような状態なのかを知りたがっているのは確かで、中にはまだ第一原発は再び放射能を出すかもしれないと警戒している人もいる。また、第一、第二について再び大地震が襲えばどうなるかを心配している。帰還を判断出来ない理由について聞くと、原発があることに対する不安をあげる人がかなりいる。

配布されたものを毎月読んでいるが問題が多い。まず、対象を平均的な住民としていると考えると、カラー写真や図は豊富だが、文章中に専門用語が多く説明の仕方もわかりにくい。なさけない話だが、これらの印刷物を何故つくっているのか、目的を理解していない人たちが作成し、チェックをしているとしか思えない。

例えば、「ブローアウトパネル閉止完了」、「ストロンチウム処理水」、「プロセス主建屋」などという言葉がいきなり出てくる。質問受付に電話すると電話口に出た人も文系であると何のことか答えられない。これでは一般の人用ではないだろう。書いた本人はわかって書いているようだが、残念ながら事故以前の広報のレベルにも達していない。

使用している図も仕事で使っているものを切り取ってコピペしているので、住民用には不要な文字や印などもそのまま入っていて見づらい。文章はフレーズがやたらに長くわかりにくい。主語述語の関係がわからないなど文章を書く訓練がされているとは感じられない。次の一文を読んでどう思われるだろうか。

「長期にわたる福島第一原発の安全かつ着実な廃炉に向けて、現場で懸命に取り組まれている作業員の皆様に敬意を評し、厳しい環境下において、困難な課題に果敢に挑戦し、顕著な功績を挙げた元請企業と協力企業からなる作業チームに対して、福島第一廃炉国際フォーラムの中で、内閣総理大臣、経済産業大臣及び経済産業副大臣(原子力災害現地対策本部長)名の感謝状を授与しました。」

5行にわたる長い文だが、東京電力として書いているようには思えない。感謝状を授与したのは大臣で、もらったのは現場で働く東京電力社員を含むチームであるが、この文は国の立場で書かれている。復興推進室に電話して、そのことを質問すると、「内容は一人ではなく、数人が会議をして作成しています。その中に国から来られた方もいらっしゃるのでついそのような表現に…」という返事があり、ようやくこの変な文になった理由がわかった。思わぬところで国の役人の影が見えたのには驚いてしまった。

窓口の担当者もほとんどの質問に即答出来ないのはどうしてか。印刷物の存在は知っているようだが、真剣に内容を理解しようとして読んだ形跡がない。
汚染水対策の凍土壁について質問をした際に、原子力規制委員会で委員長代理から、「壁とは名ばかりですだれのようなもの」と皮肉られた話を知らなかったので、現場にいる東京電力の社員でもその程度の意識かと驚いた。

この数ヶ月の間、毎回問題点を指摘して改善をお願いしているが、一向によくならない。組織内で誰も住民目線でのチェックをしていない、質問をしても担当者はすぐには答えられないことがほとんど。これでは「住民の不安を解消するための広報活動をやっている」というアリバイづくりで、一番やってはいけない形式主義に陥っている。

怖いのは、住民から「現場の廃炉工事もこんな調子でやっているのでは」と思われることだ。せっかくの広報活動が住民を安心させるのではなく、逆に東京電力はあいかわらず住民の立場にたたずに杜撰なことをやっているのだろうと不信感を与えてしまう。

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