日本エネルギー会議

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聞こえてくる音

この5年間、帰還困難区域にある我が家の状態を確認するため、毎月一回必ず一時立ち入り申請をして、須賀川市から車で2時間かけて富岡町まで通っている。帰還困難区域は誰も住んでいないので、物音一つしないはずだが、庭で草刈をしていると絶えずいろいろな音が聞こえてくる。事故前、ここで暮らしていた頃の方が静かだったくらいだ。
家の敷地は県道から少し奥まったところにあるが、この頃は除染関係の車両が県道をひっきりなしに通っている。行政区内に出来た放射性廃棄物の仮置き場に出入りするダンプなどだ。遠くで草刈機のエンジンの音が聞こえる。キジの鳴く声がする。これはごく近くだ。以前からキジはいたが、住民がいなくなってからはその数を増やしている。草刈をしていると突然群れが飛び立つこともあるし、オスがメスを追いかけて低空飛行で庭を横切ることもある。その羽音はバタバタと騒がしい。イノシシ、タヌキ、ハクビシン、リスなどもいるが昼間は音をたてない。

一番よく聞こえるのが、町が流している防災無線だ。誰も住んでいなくても、防災無線は流し続けられている。女性職員がゆっくりと繰り返し伝える放送は一次立ち入りをしている住民を対象としたものだ。「こちらは防災無線富岡です。○○課よりお知らせします」という前置きに続いて聞こえてくる内容は「最近、クマの目撃情報が寄せられています。一時立ち入りした際にはクマに注意してください。クマを見かけた人はすぐに産業振興課まで連絡してください」「最近ゴミの分別が守られていない状況が見受けられます。今後、ゴミ処理に支障が出ますので、分別ルールを守ってゴミを捨ててください」「一時立ち入りの時間は全部の区域で午前9時から午後4時となっています。帰還困難区域の方はゲートを閉めますので、それまでに退出してください」「一時帰宅を終えて帰る際には、かならず施錠をし、ブレーカーを落とすようにしてください」「町内で火を使うことは禁止されています。火災防止の観点から火を使わないようにしてください」

このような放送をゆっくりとした無表情な口調で、二回づつ読み上げるので、この間はがまんして聞くしかない。

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