日本エネルギー会議

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苦し紛れの措置

福島県内の学校の敷地内など約1000箇所に仮置きしている除染廃棄物の搬出を急ぐため、自民党の復興加速化本部と党県連は「教育の上でも人道的な面でも町有地提供に賛同していただきたい」と大熊町、双葉町に町が所有する土地の提供を要請していたが、このほど大熊町がこれを受け入れた。

福島第一原発の事故にともなう県内の除染で出た放射性廃棄物は大熊町と双葉町にまたがって建設される中間貯蔵施設に入れ、30年後に県外に搬出することが決まっているが、その施設を作るための土地の確保がいっこうに進まず、今回の特別要請となった。

「子供の教育・人道」という地元として反対しづらい理由を盾にしてまで要請したことは、環境省による中間貯蔵施設の用地取得交渉がいかに難航しているかを如実に表している。中間貯蔵施設の建設予定地のうち、売買や地上権設定の契約ができたのは、事故から5年経過した4月末時点で全体の2・2%に過ぎない。除染廃棄物の処理計画は絶望的な状況と言える。

中間貯蔵施設全体の面積は1600ヘクタール。この中に町有地は約1割の165ヘクタールある。従来、ここに手をつけなかったのは、町が町有地を提供することで、民間の土地の所有者に圧力をかけることになるのではとの配慮があったからだが、もはやそんなことは言っていられない状況に国は追い込まれている。現在はわずかに確保出来た土地に県内各地から試験運搬をしてお茶を濁しているが、政府、自民党としてはなんとかオリンピックまでに形を整えて、中間貯蔵施設計画における見通しが甘かったことを隠したいのだ。今回は苦し紛れの応急措置だが、これも満杯となればもう後がない。

こうならないようにすることは出来たはずだ。東京電力は事故後、避難区域の不動産賠償を行った。特に大熊町、双葉町を中心とした帰還困難区域には事故時の評価額に加えて、都市部での土地購入が出来るように賠償金額の上乗せまでした。ところが、十分な額の賠償を支払ったにもかかわらず所有権は東京電力に移転しなくてもよいこととした。この措置は国との相談の結果か、東京電力独自の判断かは不明だが、少なくとも被災者に相談はなく一方的なものだった。

おそらく、被災者が何年か後に帰還出来るようになった際に、元の家屋敷に住めるようにすることで被災住民の東京電力に対する恨みを鎮める狙いがあったのだろう。その裏には裁判によらず和解で済ませ、福島第一の廃炉や福島第二の再稼働など後々のことも考えて、東京電力に対する住民感情を少しでも良くしておこうとした意図が見える。

帰還困難区域だけでも賠償時に所有権を東京電力(実際には国)に移すことにしておけば、除染廃棄物の置き場には困らなかったはずだ。当時は中間貯蔵施設用の土地の賃貸契約が一、二年で出来ると踏んでいたきらいがある。新幹線や高速道路の建設で土地を買収する際、既に亡くなった人の名義になっている土地は相続人が何十人何百人となり、大変な苦労をすることを環境省は知らなかったようだ。現在、環境省は帰還困難区域を中心に除染廃棄物を多額の賃借料を所有者に支払って広大な田畑や空き地に仮置きしている。

自らは住民の反感を被りたくない政治家と勉強不足で先を読めず対処療法的な施策を繰り返す役人のせいで、帰還のための環境は整わず、除染費用だけが膨らみ続けている。

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