日本エネルギー会議

  • 設立趣旨
  • お問合せ

新たな課税への懸念

先月、全国初の廃炉への課税が福井県議会で可決された。廃炉工事中の原発には運転中の半分の出力割が課せられる。廃炉となった原発に加えて5年を超え貯蔵された使用済み核燃料にも課税されることになり、関連の税収は現行の年間60億円が90億円となる。使用済み核燃料に対しては1キロあたり年間1000円を課す「搬出促進割」を新設し、使用済み核燃料の県外搬出を促す狙いだ。

これらの税収は、県と原発立地・周辺8市町のインフラ整備や原発周辺の安全対策、企業誘致対策などに使われることになっている。議案に反対した共産党の県議は「搬出促進割は金銭解決の様相が強く、今でも事実上の中間貯蔵状態にある使用済み燃料をさらに60年、70年と半永久的に原発内で管理する懸念が強まる」と批判した。

多くの原発のある福井県では、高浜原発など運転期間の延長が行われる一方で、敦賀、美浜、ふげんなど廃炉される原発も増え、税収の落ち込みが予想されるために立法を急いだと思われる。核燃料税が各県に広まったように、廃炉課税も福島、静岡、島根など各地に波及するに違いない。核燃料税に代表されるような原子力施設が立地されている都道府県が条例で制定する「都道府県税」が拡大されることで二つの懸念が生ずる。

ひとつの懸念はこれらの税を支払うのは電力会社が、電力料金に跳ね返るコストであるため抵抗すべきところなのに、従来の総括原価方式を引きずり、地元自治体の機嫌を損ねることを警戒して、表向きは課税に抵抗しないことだ。この調子では原発を人質にとられ、どこまでも付き合うしかない。そうなれば、電力自由化の下、既設の原発さえも他の電源と競争する力を徐々に失っていき、守ろうとした原発の存続を危うくすることになる。

もうひとつの懸念は、立地自治体が原発財源に頼り続けることによって、自治体としての地域振興のための企画能力、実行力を失ったままになることだ。
従来、立地自治体は三法交付金など、さまざまな歳入を原発関連で得ており、潤沢な財源を持つ故の慎重さを欠いた金の使い方につながっていた。全国の自治体が生き残りをかけて頭と身体に汗をかいている中、原発の立地自治体は調査や企画も自分の足で稼ぐのではなく、外部のコンサルを使うことが出来た。実際、何度失敗しても楽々と次のプロジェクトの財源を得てきたのである。原発による税収で原発に代わる産業を興すという一見矛盾を感じる政策が、どの自治体でも唱えられてきたが、いずれも成功したとは言えない。この状態が課税強化でこれまで通り続くのは地域のためにならない。

今回、反対を唱えた共産党県議の言うように、「搬出促進割」などの課税強化は使用済み燃料保管の長期固定化につながる恐れは十分にある。立地自治体は国や電力会社のバックエンド政策が思うように行かないことを見越しており、いつまでもこの課税が財源として使えると、したたかに考えているのではないか。その真意を見透かされないように、あえて課税目的を「使用済み燃料の県外搬出促進」にしたのではないかと推測するのは考えすぎだろうか。

  • データベース室
  • エネルギーとは?
  • 世界と日本のエネルギー
  • 原子力の論点
  • 放射線と健康