日本エネルギー会議

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問題発言ではないのか

原子力規制庁には熊本地震で新幹線や道路が被害を受けたことを踏まえて、原発事故が複合して起きた場合、速やかな避難ができるのかなどの懸念の声が寄せられているという。4月27日、原子力規制委員会の田中委員長は記者会見で、熊本県などで相次ぐ地震を踏まえた対応を問われ、原発事故が起きた際、避難所や住宅に屋内退避するなどとしている国の防災指針について、見直す必要はないという考えを示した。以前、原子力規制委員長は「規制委員会は避難計画を審査対象としない」と発言していたが、今回はコミットした。

NHKニュースによれば、田中委員長は国の原子力防災の指針で事故が起きた際、原発から30キロ圏内で避難所や住宅に屋内待避するとしているが可能なのかと問われ、「基本的に避難所に避難してもらうことがなるが、避難所が使えずとどまれない場合は、さらに別の場所に避難してもらうことになる。屋内待避ができないならば、それに対応した対策が必要だ」と述べた。さらに「自然災害が起こって原子力災害が起きるまでに相当時間があり、状況を見てどうするか判断することになる。道路は土砂崩れなどがあれば、通れるようにするか別の方法をとるしかない」などと述べ、現在の指針で対応できるとして、見直す必要はないという考えを示した。

翌日の毎日新聞の記事では、建物の倒壊などで屋内退避が困難になった場合について委員長は「そこから離れ、耐震性のある丈夫な建物に避難していただく」と説明。地震で避難経路が寸断された場合も「土砂崩れになれば緊急に処理して通れるようにするなどの対策をしてもらう」と語り、避難計画の仕組みを見直す考えがないことを強調した。

福島第一原発の事故で避難を経験した人からすれば、何を呑気なことを言っているのかと思う。そもそも5キロ圏の人たちが避難を始めたらその外側の人たちが屋内退避で我慢できるか疑問だ。福島第一原発の事故のときも、メールやラインで相当の人が避難指示前に自宅を離れている。建物が倒壊した時、近くで耐震性のある建物を原子力規制委員会は準備してくれるのだろうか。「自然災害が起こって原子力災害が起きるまでに相当時間がある」としているがどのような自然災害、どのような原発事故を想定しているのか、そして、その根拠も説明されていない。楽観的と言うより、何か投げやりに聞こえる。

「避難経路が土砂崩れになれば緊急に通れるようにする」と言っているが、避難者だけでなく事故対応に駆けつける部隊も通る道であり、重機とオペレーターをその現場まで派遣して作業完了するまでどのくらいで出来ると考えているのか。熊本の状況を見ていても道路の復旧は容易いものではない。田中委員長は各自治体に対応能力を確認したのだろうか。

私は何度も言っているが、福島第一原発の事故の際は奇跡的に主要道路の損傷がなかったのだ。あの車の渋滞の先に通行止めがあったならば、すさまじい混乱が生じただろうと今でもぞっとする。委員長は「別な方法」と言っているが具体的ではない。このような発言をするのは、もしかしたら委員長が「我が国では、もう二度と過酷事故は起きない」と心の中で思っているのではないかと疑いたくなる。NHKや毎日新聞も淡々とした伝え方で、その発言に対する記者の憤りは感じられず、他のメディアの扱いも小さいのが心もとない。これこそ原発事故の風化ではないかと思う。

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