日本エネルギー会議

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石炭火力の反撃

このところ地球温暖化の元凶として世界中で石炭火力発電に対する批判が高まっている。石炭は安定供給と価格の安さに加えて豊富な埋蔵量という長所はあるが、批判の的は主要な電源の中でも目立つ二酸化炭素の排出量の多さだ。欧米で石炭火力発電所の新たな建設を禁止しようという動きがあるが、現実には日本や中国では石炭火力発電所の建設が止まらない。我が国でも原発の再稼働や増設にまで踏み込まないと、このままでは昨年12月に採択された地球温暖化対策の枠組み「パリ協定」は守れないとの声も聞かれる。

これに対して、石炭火力発電をなんとか生き延びさせようとする技術開発が盛んに行われていることも知っておく必要がある。従来の二酸化炭素抑制対策はCCS(CO2の回収・貯留)であったが、そのために使うエネルギーが必要なこと、貯留場所に限界があることなどから、最近は発想の転換で分離したCO2を経済価値の高い用途に使うCCUと呼ばれる技術開発が注目されている。 具体的には排気から積極的にCO2を分離し、高濃度のCO2を農業や工業に利用する技術だ。大阪ガスなどの研究成果として大気中の通常のCO2濃度360PPМを人為的に700~1000PPМに上げると、葉野菜で25~30%、果物で20%程度、花きでは40%収穫増が可能だという。厄介者のCO2が消費されるとともに安定的な収益源になる可能性がある。

先駆的な例としてオランダでは既に営業ベースで精油所など化学工場の工程から排出されるCO2を温室栽培に活用する事業がロイヤル・ダッチ・シェルによって行われており、日本でもトヨタ系列の花き生産・販売会社、トヨタフローリテックが、マイクロガスタービンを使った方法で年間約400万鉢の花を生産していることを最近知った。

石炭火力発電の反撃はこれで終わりではない。NEDOは今年4月、「酸素吹石炭ガス化複合発電(酸素吹IGCC)」実証試験設備にCO2分離・回収設備を付設する「CO2分離・回収型酸素吹IGCC」の実証事業を今年度から開始したと発表。CO2を90%回収しながらも現在の微粉炭火力発電と同等レベルの送電端効率40%を目指す。石炭を一度ガス化して燃料電池、ガスタービン、蒸気タービンの3種類の発電形態を組み合わせて複合発電を行うことで、CO2分離・回収を組み合わせた低炭素石炭火力発電を実現するというのだ。

装置としてはやや複雑そうだが、CO2の回収率の高さに驚かされる。 開発は中国電力の火力発電所構内などで三段階にわけて行われるが、2025年頃には大型化、商業化に目処をつける予定だ。これらの技術の実用化が実現すると、「温暖化対策は原発しかない」という主張も根拠が揺らぐ可能性がある。 

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