日本エネルギー会議

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原発は地域を潤すか(6)

今回は原発と地域産業についての続き。
原発と地域産業について新潟日報の特集記事の「原発が地域に多くの産業を興した形跡はない」という結論は、ほぼ納得がいくものだ。原発で使用する部品の製造や定期検査工事などへの参入障壁は高い。これに対して、全国どこの原発でも、地元企業で地元住民を雇用し、しっかり利益を上げて長続きしている分野がある。それは原子炉やタービンのような主要な設備以外の設備のメンテナンスと、構内のサービス業務だ。

具体的には、広報、資料管理、警備、清掃、塗装、造園管理、除雪、倉庫など資材管理、除染、日常点検、放射性雑個体廃棄物の運搬保管作業、廃棄物処理系や水処理施設、除塵施設など付属施設の運転、ルーチンの放射線管理、汚染管理区域用防護服や構内用作業服の洗濯、車両の運行、消防、給食、売店、洗濯、社員寮など福利厚生関連のサービス業務などだ。これらの業務は年間を通じて安定的な業務量があるが、そのうち放射線管理業務や服の洗濯などサービス提供業務は大量の作業者が入構する定期検査時には業務が増大する。

原発構内の常駐業者と呼ばれる人々はこうした業務に就いており、その数は構内にいる電力会社の社員のおよそ倍となる。生産年齢の男性の作業員がほとんどであるが、管理区域外の業務では、職種によって地元の女性や比較的高齢の男性が常勤で雇用されており、地域にとってはまたとない職場となっている。

これら業務を電力会社から受注しているのは、主に電力会社の子会社である。会社にもよるが電力会社は業種別に数社の子会社に発注している。子会社は原発構内に現地事務所を構え、地元出身者を定期採用している。管理職は転勤があるが、一般職は他の原発への応援を除いて転勤はない。すでに原発が運転開始してから数十年を経過し、子会社のプロバー社員は管理職になっているが、電力会社の社員で定年退職者や自治体の管理職だった者(例えば地元の役場、消防署、警察など)も何人かは退職後に関連の業務を行う子会社に採用されている。

上に示した幅広い業務のうち特に現場作業が主体である清掃、塗装、造園管理、除雪、除染、日常点検、放射性雑個体廃棄物の運搬保管作業、廃棄物処理系や水処理施設、除塵施設など付属施設の運転、汚染管理区域用防護服や構内用作業服の洗濯などの業務においては電力会社の子会社は下請企業を使っていることが多いが、定期検査工事に入る原子炉メーカーや大手工事会社の場合と違い、多層構造の請負制はとっていない。

こうしたなかで大きな成功を収めたのが、㈱アトックスである。㈱アトックスはもともと東京でビルの清掃などをする企業であったが、原発の黎明時代に㈱原子力代行という名称でこの分野に参入し、今や全国のほとんどの原発、原子力関連施設で確固たる地位を得ている。原発の構内に常駐する電力会社の子会社が当該電力の原発サイトだけをカバーし、また下請けの地元企業もその地域だけの企業であるのに対して、㈱アトックスは全国に事業所を持ち、互いに応援をしたり、管理職も各地を転勤したりしている。柏市には除染などの研究所も所有している。

これまで述べた原発構内での常駐者は数としては製造業の工場に比較して数も少なく、華やかさもないが、景気の浮沈とは無関係に数十年にわたって他に例のない安定的な雇用をしてきた。地方では兼業農家が多いが、兼業として原発に勤務する者も多い。県単位ではともかく、原発の立地地域住民や通勤圏の住民にとっては原発の経済的恩恵としてこれらの企業は十分に評価出来るものだ。もし、原発が立地しなかったなら別の企業が誘致されて大いに栄えたかと言えば、原発立地地域の立地条件や労働力の確保などを勘案すると、そうではない可能性が高い。

「原発が来てもよくならなかった」という表現がされることがあるが、「原発が来なかったら、もっとひどい状況になっていた」というのが本当であろう。
つづく

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