日本エネルギー会議

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資金計画

先日の日本経済新聞は「廃炉の時代への確かな備えを」と題して円滑に廃炉を進めるための課題を論じている。あげられたのは、解体で生ずる大量の放射性廃棄物について処分の基準の決定、処分場探し、長期にわたる必要な人材の確保などだ。新増設がなく廃炉だけが進んでしまうとエネルギー自給や地球温暖化対策の面で問題が生ずる恐れがあるとも指摘している。

現役時代、私のテーマの一つは原子力の人材問題だった。あるとき工事会社の人と話をしていてハッとしたことがある。私が人材確保、人材育成について意見を聞いたところ、その方は「電力会社の側で建設計画をしっかり進めていただくことです。安定して高収入が得られ、やりがいのある仕事があれば優秀な人が自然に集まります。そうすれば理想的な育成計画づくりも十分に出来ます」と自信を持って答えたのだ。人材の確保と育成にはまず仕事の確保が大前提になるということだ。 

建設でも廃炉でも仕事の確保には資金的な裏付けを要する。廃炉は通常、数百億円かかるとされ、さらに廃棄物処分費用も加わる。建設のための資金は原発を運転することで回収されるが、廃炉の場合は運転中の積立金が頼り。いままでの積立額で間に合うかは否定的な意見が多い。

最近、欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会がEU域内の原発に関して、2050年までに廃炉に1230億ユーロ(約15兆円)、また使用済み燃料や放射性廃棄物の管理、地下への埋め立て処分などには1300億ユーロ(約16兆円)必要であると明らかにした。

また、史上最悪の原発事故を起こしたチェルノブイリ原発の廃炉では、事故後に残っている放射性物質を今後100年間封じ込める作業にかかる費用が膨らんでいる。事故発生から31年後の2017年末までに新しい構造物で原発を完全に封じ込めるため不足している6億1500万ユーロ(約791億円)の資金を国際機関がどのように拠出するかが課題となっている。欧州復興開発銀行は予算不足を埋めるために、欧州委員会とG7が1億6500万ユーロを拠出するなら新たに3億5000万ユーロを出すとしているが、それでも1億ユーロが足りないようだ。

福島第一原発の場合、2兆円を超す資金が必要と見込まれている。当面は国や電力会社が東電に資金注入しているが40年とも言われる廃炉期間中、確保される見通しはあるのか、それが最大の課題と思えるがまだ見えてこない。少なくともこれから10年程度の年度毎の資金需要と調達方法を検討する必要がある。これらは結局、税金や電気料金で賄われるはずだが、負担する国民には事前事後にきっちりと資金計画と実施結果の妥当性が示されなければならない。

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