日本エネルギー会議

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福島県と水素エネルギー

安倍首相は先月はじめ、福島県を水素エネルギーの技術開発拠点とする「福島新エネ社会構想」を発表した。風力発電所などから1万キロワットの再生可能エネルギーを集め、水を電気分解して燃料電池車1万台の年間使用量に相当する水素を毎年製造できるようにする。福島で作った水素を東京五輪で選手らを輸送する燃料電池車に充填するほか、選手村施設の電気エネルギーとして活用する構想だ。福島県や電力会社も加えた官民合同の構想会議を月内に設置する。

確かに原発事故で傷ついた福島県のイメージを払拭し、首相が東京五輪招致の際に発言し批判を受けた「汚染水などのアンダーコントロール」を実際にアッピールしたいのだろうが、いくつか疑問点も残る。

まず、ソーラーや風力のように不安定な電源を水素製造に使うことで、貯蔵出来るエネルギーに変換し、それを消費地に運搬出来るようにするには、電気分解の手間や危険物の運搬、さらには水素から電気に戻すことが必要で多くのロスがある。それより起こした電気を原発のように東電の誇る50万ボルトの福島幹線で一気に首都圏まで送った方がはるかに経済的で安全性も高い。少なくとも福島第一原発6基分の送電容量は空いている。風力などによる発電が不安定というのなら、すでに東北電力が南相馬市に設置したような大容量の蓄電設備(4万キロワット)を新福島変電所に設置すればよい。

燃料電池車はトヨタやホンダが開発し、各地に水素ステーションを設置しようとしているが、一箇所1億円以上と高額なことと、燃料電池車が少ないのでなかなか広がらない。それに比べて電気自動車はメーカーも多く、価格もアメリカのステラ社製の最新普及モデル(電池はパナソニック製)では一回の充電で航続距離が300キロ以上。価格も400万円程度。その発表当日に予約申し込みが27万件も来たほど人気だ。日産などの国産車も含め、ここ数年で急速に世の中に普及しそうだ。また、走行中に地面から非接触で充電する技術も開発されつつある。私は電気自動車か水素自動車かの勝負は先が見えてきたと考える。

水素の製造方法も、電気分解という古典的なものではなく、原子力研究開発機構が開発し、世界に誇れる成果を挙げた高温ガス炉によって直接水素製造を行う方法に取り組むべきだろう。安倍首相のやろうとしていることは、かつて大阪万博に原子力発電所から電気を供給しようとしたことを思い出させるが、技術開発の現実の方向性を人々に誤って伝えるだけでなく、福島の復興にも引っ掛けて世間にアッピールしようとする魂胆が透けて見える。

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