日本エネルギー会議

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迷惑千万な話

「3.11」5年目の今日、安倍首相が福島第一原発の事故関連で重大な決断をしたことが発表された。福島県の避難区域の中で最も放射線量が高い「帰還困難区域」の一部を解除することにし、今年の夏までに計画をつくるというものだ。国は既に富岡町や浪江町の帰還困難区域を除く区域を来年の春に解除する方向であり、国が除染も集中的に行う一方、富岡町などもそのつもりでインフラ整備を進めている。

そこに降って湧いたようにいままで除染計画もなかった帰還困難区域まで解除しようというのだから驚いた。大津地裁の「再稼働認めずの判決」よりこっちの話の方が重大だ。私の家は帰還困難区域にあるといっても居住制限区域とは100メートルほど南にある道路一つで居住制限区域だ。線量も低くなっていて、一部解除の対象になる可能性が高いと見ている。

そこで困った問題が二つ。ひとつは今のところ居住制限区域で行われている除染によって出た放射性廃棄物の入った膨大な数の黒い袋が私の住んでいる行政区のいたるところに積み上がっているということ。この状態は既に解除となっている楢葉町でも、来年春に解除になる富岡町の居住制限区域でも同様だ。

いくら線量が下がりインフラが整備されても、とても心やすらかに楽しい田舎暮らしが出来るような状況ではない。いままで避難していた以上に精神的に悪い環境で、まるで臭のしないゴミ捨て場に住んでいるようなものだ。もしかすると可燃物などは夏には腐敗して悪臭を放つかもしれない。誰も帰還する気にはならず、多分に「それなら首相でも知事でも別荘をつくって週末にはそこで住んでみろ」という声が上がるだろう。毎月精神的損害賠償10万円をずっと払いつづけてもらっても絶対に嫌だ。私は楢葉町の帰還率が数パーセントどまりなのは、黒い袋の山にも原因ありと睨んでいる。

もうひとつは、来年春に解除をめざしている100メートル先の住民や帰還困難区域ではない友人からの、「帰還する時期は同じなのに、賠償は多くもらっている」という妬みや恨みの声がさらに大きくなりそうなことだ。現在でも、事あるごとに賠償金額の差について嫌な思いをしているが、もしも早期帰還となった場合、完全に絶交状態の関係になるだろう。居住制限区域の人々に対して追加賠償をしてもらわねばとても彼らと同じ町で暮らしていけそうもない。
(もちろん追加賠償などすれば、それはさらにそのほかの人々にも影響してしまい収拾がつかなくなることはわかるが…)

首相はなんとか早く立ち入り避難区域を縮小し、住民を帰還させたい気持ちなのだろうが、住民にとって迷惑千万な机上の暴論だ。

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