日本エネルギー会議

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怪しい民意

昨日はあっと驚く判決が大津地裁で出たが、全体としては各地で原発の再稼働への動きが続いている。「再稼働の流れを福島県民はどのように思っているのでしょうか」という質問を受けることが多くなった。福島第一原発の事故で未曾有の長期避難を経験し、多くの関連死を出した福島県民、特に浜通りの人々は「原発事故はやはり経験してみないとその怖さがわからないのか」と憤りを覚えるが、原発の与える主に経済的恩恵を生まれた時から受けてきた人々は、薩摩川内市や高浜町の人々の「生活がかかっているという気持ち」もある程度理解出来る。

再稼働する原発のある町でのインタビューがテレビで放映されたり、新聞記事になったりするが、殆どの場合両論併記型だ。多くの場合、地元の首長は再稼働を望み、議会も再稼働推進動議を与党が出して決議する。その様子を見ながら知事は了解のタイミングを狙っている。原発に関しては住民投票をすればどうなるかはわからないが、議会でどうなるかはかなり正確に読める。国会と同じで一度選挙で多数を取り与党となれば、公約したことでも公約していないことでも多数決で押し切ることは可能だ。議会としては、原発など特定の問題について自分たちの存在を空洞化しかねない住民投票は避けようとする傾向がある。

電力会社の地域対応は全住民を相手にすることは時間的にも無理。よほどの不祥事の後では、社員が手分けして全戸訪問などをするが、普段は首長や有力議員(例えば、議長や原子力特別委員会の委員長、与党幹部)などがターゲットとなる。彼らは馬(商工業者や農協)に乗った武将であり、馬が暴れれば落馬(落選)する。これは村から県まで、いや国会議員まで同じだ。

となれば「将を射んとすれば馬を射よ」の例えのとおりに、電力会社の地域担当は商工会や商工会議所の主要メンバーに働きかけることで原発の安全性といかに地元経済への恩恵があるかに理解を示してもらい、彼ら(馬)から首長や議員(武将)に対して原発推進を促してもらうことになる。こうして議会がまとまれば、首長も決断をしやすい。再稼働の要請は商工会議所などから出ることが多いのはそのためだ。

このような形での首長や議会での発議や決議は果たして住民投票や住民アンケートの結果と同じになるかは、はなはだ疑問だ。小さな町と言えども、議会民主主義をとっている限り、選挙で選ばれた首長なり議員なりが住民の意見を代表していることが建前。だが、その決議が本当に民意を受けているものではなく、商工業者など有力者を介しての電力会社の意向である場合が多く、「怪しい民意」とでも言わねばならない。もともと電力会社は地方では抜きん出た力を持つ企業であり、地方経済団体のトップは電力会社会長の指定席となっている。まさに電力会社が馬そのものでもある。

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