日本エネルギー会議

  • 設立趣旨
  • お問合せ

リスクの説明

NHK総合テレビ「NEXT 未来のために」で、東京電力の各地の支店の社員が福島復興本社に配属となり、福島第一原発の事故で避難区域となった世帯の家や空き地の清掃奉仕活動をする様子を報じていた。草刈りや家財の片付けが主な仕事でいわき市に泊まり込み、数人のチームが草払い機などをワゴン車に積んで避難した各家の庭や空き地の草刈りや長い間放置された家財やゴミなどを家の中から搬出する作業に汗を流していた。

実は富岡町の私の家でも庭の草刈りをこれまで三回行ってもらっている。ほとんどが原子力とは関係のない部署から来ており、大変礼儀正しく真面目に作業をしていただいて、こちらが恐縮するくらいだ。我が家の庭がなんとか形をとどめているのも彼らのおかげである。

番組の中で、楢葉町の老夫婦の家で、家の中の片付けをしている場面があったが、引き出しから昔、隣の富岡町にあったPR施設に見学に行った際に、もらってきたパンフレットが出てきた。「捨てますか」という東京電力の社員の問いに、家のご主人が「いや、それはとっておこう」と答えていた。東京電力で広報を担当していたという人が、自分もずいぶん「原発は安全だ」と説明したものですと昔の思い出を語るシーンもあった。

私も東海村や敦賀市の日本原電のPR施設に客を連れてきて、係員の上手な説明を一緒に聞いていたことを思い出した。議員団、商工会、農協、漁業組合、町内会、消防団、婦人会、老人会、子ども会などなど、地元のさまざまな組織を案内したものだ。

果たして、全国どこのサイトで原発のリスクについてどの程度説明がされたのかわからないが、リスクより安全性をことさら強調していたはず。質問があれば、対応マニュアル、想定問答集によって対応していた。施設見学においては建物や装置の巨大さ、細部に至るまで隅々まで清潔に維持された現場を見せることによって「百聞は一見に如かず」で安全な印象を持っていただくように努力した。コンクリートの壁の厚さや鉄筋の太さで驚いていただくこともあった。逆にメリットや必要性については燃料輸入が安定していること、温暖化ガスを出さないこと、発電コストが安いことなど他の電源との比較で有利な点を積極的に話した。スリーマイルやチェルノブイリの事故については、我が国の原発の設備や管理状況との違いを強調することにしていた。

最近、銀行や証券会社で投資信託などを購入した人は、値下がりや為替などで損をするリスクについてしつこい程説明がされ、購入手続きに入る前には、説明を聞いて納得したことを書類にサインすることを求められる。投資する金は余った金で、生活資金ではないなどという項目もある。こうしたことが行われるようになった背景には、証券会社などの販売時の説明においてリスクを出来るだけ感じさせないように巧みな誘導が行われていたことの反省がある。

今思えば、原発の説明においても、メリットだけでなくデメリットについてもしっかり情報開示をして正しい理解のもとに原発を支持していただくようにすべきだったと思う。その方が、支持していただけた場合、しっかりとした強い支持を得られ、また本人も家族や知り合いに原発について聞かれたときにも説明がしやすいはずだった。また、なにより説明する電力会社の社員本人が自ら安全神話に陥ることを防げたと思う。

  • データベース室
  • エネルギーとは?
  • 世界と日本のエネルギー
  • 原子力の論点
  • 放射線と健康