日本エネルギー会議

  • 設立趣旨
  • お問合せ

直ぐにやるべきこと

NHKスペシャルは全町避難の町で一番早く解除された楢葉町の苦悩がテーマだった。現在のところ、帰還した住民はわずかに6パーセント。その7割近くが高齢者で、企業誘致が出来ても従業員は住民ではなくいわき市などからの通勤者。勤労世帯はほとんど戻っていない。

カメラは帰還した住民を探して町を回っている社会福祉協議会の女性メンバーに同行取材。訪問先で畑仕事をしていた87歳のひとり暮らしの老人が「近所に誰もいない」と涙する場面があった。町役場も元通りの場所で業務を再開したが、職員は家族を避難させており、いわき市などからの通勤者が多い。 

さらに番組は復興計画を担当している町の職員を追って、いかに町の商業施設や企業を戻すのが困難かを伝えていた。私の家のある富岡町は楢葉町の隣にあり、来年春の区域解除を目指しているので、思わず画面に見入ってしまった。

役場職員はスーパーやホームセンターを一箇所にした集合大型商業施設をプランしていて、「レンタルビデオ店も是非欲しい」などと言っていたが、ちょっと感覚がずれているのではと感じた。今、直ちにやるべきことはせっかく戻ってくれた高齢者たちの暮らしを全力で支えることではないか。いままで支えあってきた集落の住民はほとんどいない。同居して何かと世話をしてもらっていた息子たちは戻っておらず、本人の健康状態も不安がある。週に一度息子が食材や日用品などを運んでくるだけのひとり暮らしは大変だ。それでもいち早く故郷に戻って来た高齢者には国や自治体はもっと手厚い支援をするべきだ。

商業施設や病院も近くにないのだから、町は車もない高齢者世帯には少なくとも一日に1食は弁当を配るべきだ。私は事故前、富岡町に暮らしていたが、近所のひとり暮らしで身体の不自由な年寄りのおばさんは、週に二回、無料の弁当を町から配って貰っていると言っていた。それが何故今出来ないのだろう。

大型商業施設はまだ出来ていないのだから、必要なのは食材と日用品を販売する移動販売車を週二回程度出すことだ。これが命綱になる。これも事故前には毎週一回は民間の業者が毎回同じ曲をスピーカーから流しながら私の住む集落に来ていた。それが何故出来ないのだろう。ヨークベニマル、キクチスーパーなど地元のスーパーチェーンはいままでさんざん地元客に買ってもらったのだから、この際、赤字補填は町にしてもらい移動販売くらい率先して行うのが商人道というものだ。関係者は商業施設が出来ないと住民が戻らない「卵か先かニワトリが先か」のジレンマのようなことを言っていたが、そんな問題ではないのだ。

医療施設にしても完成するのはまだまだ時間がかかりそうだ。持病がなくとも高齢者はいつ病気になるかも知れない不安とともに暮らしている。町はいますぐに、高齢者が電話一本で病院の送り迎えをしてもらえるようにすべきだ。 

一方、戻った人たちにも一役買ってもらう。一人暮らしの高齢者に配る弁当を作るのは主婦のアルバイトの手を借りる。小さくとも畑をやっている人からは野菜などを買い上げる。車の運転が出来る人には弁当配りや病院の送り迎えなどを役場から依頼する。(現在私が避難している須賀川市では市内の専業主婦などに、共稼ぎの家庭の子供の習い事などへの送迎業務を斡旋している例がある)戻った人への支援は全部外部に依存するのではなく、出来る範囲でよいから戻った住民にやってもらい、住民どうしが接触し、助け合い、町の維持にすることで生きがいが感じられるようにするべきだ。

区域解除になっても、まだ都市に避難している高齢者も多い。先に帰還した高齢者が手厚く守られていると知ったら、彼らも、あるいは彼らの家族も帰還することを考えるに違いない。いち早く帰還した高齢者は町の復興にとってどれほど大切な存在であるか、国や自治体はわかっていない。

  • データベース室
  • エネルギーとは?
  • 世界と日本のエネルギー
  • 原子力の論点
  • 放射線と健康