日本エネルギー会議

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巨大組織は何故大事故を起こすのか(28)

本シリーズ(16)において巨大組織は時が経つにつれて変容して行き、その結果、組織が致命的な事故を起こす原因にもなることを指摘した。対策を考えるにあたって、その内容を振り返るとともに、それを踏まえた提言をする。(⇒以下は提言)

(1)
役人の干渉を嫌がる独立自尊の気風があった電気事業が、原発を手がけることで国の支援を受け役所との関係が深まった。国といわば運命共同体化したために、高級官僚の天下りも受け入れ、互いに利用する関係になった。
⇒規制を含め原子力開発に関する国と電力会社とのやり取りの内容を、アメリカに見習って原則として情報公開する。また、官僚の天下りについては迂回も含め禁止する。

(2)
電力会の原子力部門の社員は「最先端で、難しい、なによりも国のために仕事をしているという意識」を過剰に持った。原発は経営上の重要課題を次々と発生させ、原発部門は従来部門からは冷ややかな目で見られ、社内で孤立した。
⇒原子力部門の社員に対して、管理職になる前に他の部門あるいは社外から原子力部門がどのように見えるかを体験出来るよう、他の部門、社外に一定期間の在籍を義務付ける。

(3)
巨大出力の原発のために電力会社はバックアップとして火力発電設備を維持しなくてはならず、旧式の火力発電所を廃止することが出来ず収支に悪影響をもたらした。このため原発の稼働率をなんとしても上げようとした。
⇒規制当局が原発の低稼働率の原因である過剰で非合理的な停止時の検査など規制のやり方を改める。

(4)
開発が進むにつれ、原子炉メーカー、多層構造の請負体制に依存が進み、電力会社社員の職務は監理に限定され、現場感覚を失うとともに、メーカーに対抗する力を失った。また、発注先の固定化で競争がなくなりコスト上昇に繋がった。社員能力は空洞化し、過酷事故時にも多くをメーカーや請負会社に依存せざるを得なくなった。
⇒定期検査工事業務、運転補助業務などの二割程度を電力会社社員自らが手がけるいわゆる直営化を進める。発注先については指名発注件数を半分以下とする目標を掲げて努力する。<>/b

(5)
原発の安全性について住民の理解が深まらないまま、原発を立地する条件として地元経済への貢献を約束して開発を進めた。さらなる安全性の追求は、確固とした安全性に対する疑問を惹起させるものであり、積極的に言い出せなくなった。
⇒規制当局による世界の原発改良事項の国内原発へのバックフィットを忠実に実施していくとともに、地元説明を国からも行う。<>/b

(6)
原発を建設、運転するにあたっての地元の不安払拭や抵抗を減らすためのさまざまな工作費用や指名入札によるコスト増大が発生した。結果的に電気料金の上昇を招いたために、原発部門は無理な計画や予算削減をしなくてはならなくなった。
⇒電力自由化と原発費用の分担が決まることを機に、全国的に原発運営予算の大幅な見直しをかける。また、地元対策費などの透明化を対外的に宣言する。

(7)
時が経つにつれ、先送り課題を多く抱え、これを経済力や政治の力で突破した。国の支援を引き出すため政治家と組み、電力会社や労働組合からも議員を出した。電力会社は巨額の広告費を使いメディアに影響力を行使した結果、役所や自治体やメディアなどをコントロール出来ると考え、経営判断が歪められた。
⇒電力会社からの全面支援で国会、地方議会などに社員などを送り込むことを社内ルールで禁止する。メディアは電力会社が技術力ではなく経済力や政治力を使いすぎることの危険性を指摘するようにする。

(8)
年々地元の要求が大きくなり、地元対応のための事務所を現地に設置。その人員、体制の増強を続けた。地元住民は原発の安全性について説明を聞いて判断するのではなく、説明する人の態度や姿勢を見て「やっている人を信じる」となった。電力会社もそれに応じて技術的に詳しい説明はしないようになった。
⇒一般の人向けのパンフレットの内容を「どのように安全」を示すのではなく「どのように危険か」を示すようにする。

(9)
地元の要望で現地の職員や下請けで次第に地元出身者が増えたため、身内のいうことを信じる住民の数も増え、厳しく安全性を問いただす人が減った。地元の議会でも原発支持派が圧倒し、事故前には地元での反対運動は下火となった。
⇒国内外の監査、検査などの結果、国内外の原発との安全性の比較について、自治体や地元住民に説明をすることを安全協定に義務付ける。
 
(10)
原子力部門は人事的に閉じられ、同僚や先輩後輩の関係が密で、先輩や仲間の決めた計画やルール・慣習・先例に対し批判がしにくい。大学関係者とも委託研究資金の提供や卒業生の採用で相互依存関係となった。
⇒原子力部門と他の部門との人の入れ替えを意図的に年間1~2割程度とする。事務系についても、同じく原子力部門内だけの人事はやめる。

(11)
巨大組織の経営陣には、既得権を守り次世代に繋ぐという重責がのしかかる。前例、約束、声明などに拘束され、後になるほど選択肢が狭まり、思い切った判断が出来ない。経済力を背景に強引に事を進めがちで、優秀な人が常に合理的な判断をするとは限らず、追い詰められると危ない橋も渡ろうとする。
⇒このシリーズの(24)で書いた通り、社長が次期社長を選ぶ世襲にも似たやり方を改め、会長社長いずれかは社外から迎えるというルールとする。原発の安全については他のどのような事情も超えて、優先されるべきであることを定款など役員を縛る効力のあるものに定めておく。

(つづく)

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