日本エネルギー会議

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IAEAによる初の原子力規制委評価が注目される理由

国際原子力機関(IAEA)の専門家チームが来日、1月11日から日本の原子力規制委員会(規制委)の体制、対応などが適切かどうかを検証する作業に着手した。IAEA加盟国の規制機関や原子力発電所の検査などを評価する「総合的規制評価サービス(IRRS)」と呼ばれるもので、2012年9月の規制委発足以来、初の受け入れ。作業最終日の1月22日に暫定評価を公表。

その後3、4カ月間をかけて最終的な評価書を作成し、規制委に送付する予定だが、IAEAが規制委の活動に対して最終的にどのような認識、判断を示すかが注目される。
評価チームはフランス原子力安全局のフィリップ・ジャメ委員をリーダーとして、各国の規制当局関係者ら24人体制。原発再稼働の前提となる審査体制や緊急時対応など、12項目に関して調べる。規制委、経済産業省、文部科学省など関係機関や規制の対象となる電力会社からも、聴取。さらに、福島第一原発や日本原燃の再
処理施設(青森県六ケ所村)なども視察する。

◆転職サイトで募集をするが…
規制委には、国内外から様々な意見や批判が示されている。第一に挙げられるのが、2013年7月に施行された新規制基準の適合審査に当初見通しを大幅に上回る年月を要しているという現実。大きな要因として指摘されているのが、規制委の事務局であり、審査実務を担当する原子力規制庁職員の人員不足と専門的能力の欠如である。

2014年3月に原発検査などを担う独立行政法人の原子力安全基盤機構(JNES)と統合。定員数は1000人超に倍増したものの、不足状態が続く。規制庁は、転職サイトなども利用して適合審査や保安検査にあたる専門知識を持った経験者を募集しているが、適任者はなかなか確保できていない状況だ。

審査関係書類がA4版で数万ページにも達する膨大な量になり、誤字脱字などのチェック、修正で規制庁はもちろん申請側の電力会社にも多大な労力が費やされている。事態打開のために、書類の電子化を求める声があがっているが、規制庁は変更する姿勢を示さない。

◆非合理的審査手法が長期化
さらに、審査が大幅にずれ込んだきっかけは、いわゆる「活断層問題」をめぐる規制委の対応。規制委が法律的根拠のない「有識者会合」に調査・判断を事実上委ね、同会合による「活断層の可能性を否定できない」という曖昧な見解で、電力会社側の「活断層ではない」との主張を斥けている。日本原電敦賀原発2号機、東北電力東通原発、北陸電力志賀原発1号機で、この問題をめぐる対立が続き、その延長線上で、「近くを活断層が走っている」との理由などで基準地震動をどの程度に設定するかをめぐる議論も、かなりの時間が割かれているのが実情だ。

専門家などから「一部の有識者で調査するだけでなく、科学の問題なのだから科学的な議論を徹底的に行ってはっきりした結論を導き出せ」という主張が繰り返されているが、規制委、規制庁は正面から取り組む姿勢を見せようとしていない。

かくして、これまで規制委に審査申請した16原発26基のうち、審査を通過したのは九州電力川内原発1、2号機、関西電力高浜原発3、4号機、四国電力伊方原発3号機の5基のみ。このうち、川内原発の2基が昨年9月、11月に再稼動、高浜原発3号機が順調に進めば1月下旬、同4号機が2月下旬、伊方原発3号機は年度内にも再稼働する見通しだが、その先は不透明の一語に尽きる。

こうした非合理的な審査手法の長期化について、IAEAには実情を十分に分析、掌握し、最終評価書において現実的、建設的、科学的な視点に立った、的確な判断と見解で規制委の在り方を示すように求めたい。規制委の姿勢を放置することは、世界の原発利用にも及ぼす影響が極めて大きいと考えるためだ。

2016.1.21
日本エネルギー会議事務局

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