日本エネルギー会議

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不正の温床(最終回)

(管理の要諦)
国土交通省は杭工事のデータ偽装問題の対策として、杭を打ち込む地盤の深さが特定しづらい場合などに、元請け会社が杭工事に関して施工確認のために現場に立ち合う指針をつくることにした。(12月22日付報道)これまで下請けの人数と質が不足する問題が取り上げられていたが、実は元請の監督が少なく忙しすぎて現場に出られない、落ち着いて確認も出来ないところにも問題があった。このことは発注者や元請けが出す事故対策には書かれないことが多い。

発注者には監理責任、元請け企業は管理責任があるが、コスト削減の嵐は現場に配置する社員の人数を減らし続けてきた。その結果、現場の状況を下請けが上げてくる報告書類に頼るようになり、社員は現場に出る時間が減った。書類はデータや写真などがついているが、これらは杭打ち工事の不正でも判明したようにコピーが可能である。かろうじて現場確認が必要とされるいわゆるホールドポイントで時間を決めて立ち会いが行われることになったが、社員の大切な現場経験やOJTの機会は激減した。このことは社員が偽装などを見抜く能力を低下させる原因にもなっている。

時間と予算とマンパワーが限られているなかで、全数検査は出来ないが、重要な部分、後で見直すことが出来ない部分については書類だけではなく、しっかりと検査対象にしておく必要があり、社内のホールドポイントの見直しも必要だ。社員の立ち会い能力を高めるためには、建設が盛んだった時代にメーカーや大手工事会社の技術者であったOB人材の活躍が望まれる。

立ち会い検査は元請け企業だけでなく、下請け企業に対しても時間と労力がかかるため、やりすぎると効率が悪くなる。どこに絞ってやるか、どのような形でやるかが各社のノウハウになる。どこまでやるかは、品質や安全とコストや手間の綱引きになるため、この塩梅が一番大切なところだ。

わかりやすい例を挙げれば、ピストンとシリンダーで出来た注射器を想像すればよい。両者にはいくらかの隙間が必要で、これがなさすぎるとシリンダーの中でピストンが動かなくなる。隙間が開きすぎればピストンは自由に動くが、今度は空気や液体が抜けて注射器としての機能がなくなってしまう。状況に応じてこの間隔をいかに上手に取るか、きつ過ぎてもゆる過ぎてもいけない。ゆる過ぎれば良いものが出来ないし、きつ過ぎればコスト超過か不正に走る原因になる。結局、昔から言われているようにムリ、ムダ、ムラのあるところが不正の温床となるのだ。(このことは、かつて原子力学会の会合で講演した覚えがある)

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