日本エネルギー会議

  • 設立趣旨
  • お問合せ

開発スピードの違い

30年程前、日本原電にいた時、敦賀発電所では放射線事業所ということもあり、金沢大学から産業医を招いていた。その医師はJR金沢駅から北陸線の特急を利用して敦賀駅で降り、そこから迎えの社有車で発電所まで月2回来られていたため、1日がかりだった。「そのうち敦賀にも新幹線が走ると言う人がいますが、私は間違いなく15年後でもまだ北陸線を利用するしかないと思います。技術は日進月歩と言いますが、現実というのはそんなものです」と医師が話されたことを思い出す。今年はようやく東京から金沢まで新幹線が走って北陸地方は観光ブームに湧いているが、確かに敦賀まではまだ新幹線は走っていない。

その頃、日本原電では改良型PWRの敦賀2号機を建設中で、見学に来られた方には軽水炉はほぼ確立した技術と説明していた。山を一つ隔てたすぐ隣の白木地区では高速増殖炉「もんじゅ」が建設中であった。10年ほどかけて完成し運転開始したとたんにナトリウム漏れ事故を起こして現在も停止中だ。電力会社が巨額の資金と人材を投入して六ケ所村に建設を進めた再処理工場も竣工時期を何回延期したかわからない。核のゴミの処分場についてもまったくと言って良いほど進展がない。

他産業に就職した学友などから「原子力は数十年前の開発初期に取り組んでいた問題が、いまだに解決していないようだ」と冷やかされた。アメリカが軽水炉を作ってから、それが世界中で建設されるようになるまでにはあまり年月がかからなかったが、それ以降はめざましい技術の進歩はないようで、時が止まったかのようにも思える。

最近、エネルギー関係のニュースを見るとソーラーパネルの価格の低下や性能の向上は急速だ。ソーラーパネルの変換効率はタイプによって違いがある。現在主流の結晶シリコン型製品レベルの変換効率は16パーセントが最高だが、NEDOは開発ロードマップで、2025年までに変換効率を25パーセントに、さらに2050年には40パーセントに高める目標を設定している。今のところ順調のようだ。大型蓄電池や水素製造の技術も経済性安定性安全性に関する数値を毎年あげつつある。このような景気の良い話は原子力分野ではついぞ聞いたことがない。まるで原子力は進歩が止まったかのような印象を受ける。

コストで考えても、コストダウン手法は大型化が中心で、欧州で建設中の新型軽水炉は安全性向上のためのコスト上昇が著しい。バックエンド費用もいくらかかるのか先が見えてこない。いかに原発が大出力の安定した電源であるといえども、また、いかに環境に優しく燃料の備蓄も容易であるといえども、技術革新と人々の受容が進まなければ、そう遠くない時期に他の電源に経済性で抜かれてしまう運命にあるのではないか。

いまでも中国や中東諸国での原発建設は勢いがある。だが、それらはアメリカ、日本、ロシアなどが開発した技術を量的に拡大しているに過ぎず、新たな革新的な安全性、経済性のある原発を開発しているわけではない。

地球温暖化対策は原子力以外に決め手はないと確信している原子力関係者が多いが、原発の技術革新による経済性の大幅な向上なくしてはそうはなりそうもない。福島第一原発の事故以降、原発停止分を火力発電所で賄ったために電力会社の二酸化炭素排出量が一気に増えたと思っていたら、2013年は僅かながら減少、2014年は明らかな減少をした。電力需要の減少、再生可能エネルギーの増加、火力発電所の効率化がその原因だとしているが、この傾向はさらに拡大しそうだ。

  • データベース室
  • エネルギーとは?
  • 世界と日本のエネルギー
  • 原子力の論点
  • 放射線と健康