日本エネルギー会議

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高齢者活用社会

福島第一原発の事故の数年後から徐々に避難指示が解除された福島県双葉郡は、帰還者の中心が高齢者であり労働人口、年少者が少ない状況での復興となっている。長期間の避難により人は去り産業もなくなったため、元に戻ることはなく、新たな町づくり、産業起こしとなっている。以下は避難指示解除から数年後の202X年、双葉郡の多くの地域で高齢者が中心となった生産活動が展開されている状況を予測して描いたものだ。

双葉郡の自治体は戻った高齢者のための介護施設などを建設したが、問題は職員の不足だった。いわき市は人口も多く、働き手もいたが双葉郡まで通勤に車で一時間以上もかかるため、自治体では交通費に高速道路料金をプラスして支給することにした。しかし、まだ人手が不足したため、自治体では思い切って高齢者の中で健常者を年齢制限を設けることなく働き手として採用することにした。アシスト型ロボットの採用で作業の身体負荷が減ったことも幸いした。

健康状態や年齢など個人の都合に合わせた勤務時間や業務内容を決め、介護の補助以外にも事務、給食、清掃なども出来る範囲で高齢者の仕事としている。デイサービスの送迎、職員の通勤には巡回バスを利用してもらうようにし、その巡回バスも最新式の自動運転のバスを使うことにしたが、安全のため監視役が同乗しなくてはならなかったので、これも帰還した地元の高齢者を雇用した。

高齢者はすべて年金受給者であるが、人口が一定数確保することが、国からの地方交付税をもらう要件であるため、各自治体とも高齢者であっても大歓迎であった。さらにフルタイムでなくとも働いてもらうことによって事業所が増え事業税、所得税などの税収が確保出来た。

従来、農村部の高齢者は直売所などで副収入を得るため、あるいは自家消費や隣近所に配るために、どの世帯でも家の近くの畑で野菜などを作っていた。しかし、除染したとはいえ当面、食品としての販売はしにくいため自治体は集落毎にハウスによる水耕栽培が出来る施設をつくり、これに高齢者を雇用することを条件に農協やNPOに生産委託をした。

温暖な気候の双葉郡は野菜のほかに苺などの果物の生産にも適しており、ハウスを作ったことで海岸に近いための塩害も防ぐことが出来てあらたな果物の産地に生まれ変わりつつある。ハウス栽培施設には最新のコンビュータ制御の温度、日照、水遣り装置が備わっており、高齢の作業者の作業は主に苗の移植、巡視、収穫に絞られて身体的負荷はなく、ハウス内作業は冬でも快適な環境で行うことができる。運搬などの作業をする際には、アシスト型のロボットを身体に装着して負荷軽減をしている。野菜などの作物は双葉郡内の介護施設や病院、研究施設や廃炉作業者用の食堂などでほとんどが消費されている。

施設の周囲には果樹園のための土地を確保して、大熊町の特産品であった梨の苗木を植え、かつて梨農家であった人々に教えてもらいながら、10年計画で再び全国に出荷出来るよう準備が着々と進んでいる。ここにもさまざまな働きをするロボットが投入される予定だ。福島第一原発廃炉のために双葉郡はロボット研究の一大集積地となっているが、目の前にあるニーズに応えて新たに高齢者や地元産業に役立つロボットも同時に開発されており、ゆくゆくはロボット開発におけるシリコンバレーのような処に生まれ変わることが期待されている。

統計で考えると、人口の1パーセントに当たる人数の高齢者が毎年亡くなっていくが、高齢者予備軍である50代後半から60代前半の人がたくさんいるので、順次これらの人に入れ替わっていくので働く高齢者の数は当面維持出来る見通しだ。

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