日本エネルギー会議

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川内原発再稼働についてのお問い合わせ

(この原稿は8月11日付けでご寄稿頂きました。)
川内原発再稼働についてどう思うかとのお問い合わせが続いている。最近は3.11何周年しか話題に上らない原発も、ここにきて2年ぶりの再稼働一番手とあって外国メディアも含め注目度が高くなっている。

私は福島第一原発の事故の避難者であり、今も福島県民である。長年原発に関わってきた人間として、それも現役ではなくOBになっている立場でもあり、再稼働と聞くといろいろな思いに駆られる。

福島第一原発の事故後、新たに規制基準が見直されそれに適合するように巨額の改造費を投じてのハード、ソフトの見直しが進められた。規制当局、電力会社の関係者にとっては未曾有の難事業であったと推察される。過去にも事故や不祥事などにより長期間停止もあったが、これほど長く停止したことはなく、原発停止に伴う燃料費増加により、会社の収支がかつてなく苦しい状況であったため、原子力部門に対するプレッシャーはすごいものがあったことは容易に推察出来る。最終検査に合格するまで、さらには再稼働してからも全国、全電力から注目される中、トラブルが許されない緊張が続くはずだ。

従来も建設終了、あるいは定期検査終了と同時に原子炉の初臨界、発電開始のためのタービン発電機の初併入、定格出力へ出力上昇と一週間以上は緊張の連続であった。間に合わなければ規制当局の検査は間違いなく一週間以上先になるため、試運転とは言っても失敗の許されない過酷な状況にいつも疑問を感じていた。過去の運転実績を見ても九州電力や川内原発はトップクラスであり、昔からその実力は各電力から一目置かれている。今回はたまたま再稼働一番乗りということもあり、全国の原発の期待を背負い、全国民の注目が集まるといった異常事態である。もっとリラックスして仕事をさせてあげたいと思うが、そうはいかないのが気の毒だ。

原発立地地域に暮らしていた人間としての気持ちは複雑だ。川内市の住民のテレビのインタビューで経済的理由で再稼働を待望する声が多数聞かれる。福島県の場合、知事と議会が福島県内全機廃炉を要求しており、福島県民は再稼働のニュースに強い違和感を覚える。ただ、原発に近かった大熊町や双葉町などの住民は、かつて自分たちも原発にどっぷり依存した生活を送ってきたために、川内市の住民の気持ちも良く理解出来る。原発事故による長期の避難や風評被害が住民にふるさとをなくすなど取り返しのつかないダメージを与えることは理解するとともに、万一の覚悟はしておく必要があると言いたい。

新たな知見に迅速に対応して少しでも安全性を高めること、科学技術に対して傲慢にならず絶えず謙虚な姿勢を持ち続けること、確率的に低くても近々起きないということにはならないこと、万一の時の準備が十分に出来ていないとわかったときは再稼働すべきではないこと、結果から逆算して情報公開を躊躇しないこと、身内の都合で物事を判断しないこと、一般の人々には説明しても本当に理解はされないと割り切り規制当局さえ了解すればよしとすることなど、今までの原子力開発のあり方、地元住民、一般国民に対する対応姿勢を根本的に改めなければ原子力の将来はないと関係者は覚悟してかかる必要がある。またスリーマイル島やチェルノブイリの時のように、福島第一原発の事故の影響や原因を出来るだけ限定的にしようするやり方を採るべきではないということを老婆心から申し上げておきたい。

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