日本エネルギー会議

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星祭

昨日は七夕だったが、例年のように全天に雲がかかってしまった。七夕になると思い出すことがある。発電所に勤務していた頃、銀行から移ってこられた常務が安全を所掌されており、ちょうど7月1日から始まる安全週間に合わせて現場を視察された。技術系の執務室内で、短冊に願い事を書いて笹竹に吊るしていたのを目ざとく見つけられて早速「安全を笹に託して星祭」の一句をものにされた。電力会社出身の役員とは違うと驚いたものだ。

建設現場ではメーカーや工事会社でちょうど「ご安全に」という挨拶が流行り始めたころで、言われる度に違和感を覚えたが、いつしか慣れてしまった。日本人ならではの細かい工夫で、職場の雰囲気を盛り上げて行くやりかただと思っていたら、視察したアメリカの原発でもアメとムチも使ってルールの励行や定期検査期間の厳守、被爆低減などに取り組む運動が盛んに行われていた。

かつて安全文化の調査で福島第一原発を訪問した際に、現場の問題点を写真に撮ってそこに指摘内容と回答を記入したものが事務所の渡り廊下にたくさん掲示してあったが、発電所の管理職の一人は「本店の方で次々にやることを指示されるので、これに対応していくのが大変で、本業にしわ寄せが来ています」と小声で言われた。小さなことを積み上げていく、職場全体の雰囲気を盛り上げ注意が行き届くようにすることは悪いことではないが、根本的な問題から目を逸らす働きや大胆な発想を抑えているのではないか。

福島第一原発の事故が起きてから読んだ新聞記事には、第一原発に配属になった社員が、電気室が地下にあることを知り、「水没したら大変なことになる」と口にしたら、先輩社員から「それはタブー」と言われたと書かれていた。彼も職場仲間とQCサークルなどの活動を日々やっていたはずだ。

根本的な問題の対策実行は小さな改善、改良に比べてハードルが高い。だからといって、難攻不落の大阪城にいる気持ちで、天井の配管サポートに注意のための黒と黄の虎テープを貼り付けたり、職場の雰囲気づくりをしたりしていればよいということではないだろう。現場にいれば、「水没したら」とか「これが機能しなかったら」と恐怖を感じることがあるが、それをすくい上げてプラントとして致命的なことにならないように対策につなげることをしていくべきである。新入りの感性とベテランの経験を活かすような、根本問題の発掘のやり方を見つけ出してもらいたい。

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