日本エネルギー会議

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メルケルの誤解

ドイツのメルケル首相は2011年6月9日に連邦議会で行った演説で、 「福島事故は、全世界にとって強烈な一撃でした。この事故は私個人にとっても、強い衝撃を与えました。大災害に襲われた福島第一原発で人々が事態がさらに悪化するのを防ぐために、海水を注入して原子炉を冷却しようとしていると聞いて、私は“日本ほど技術水準が高い国も、原子力のリスクを安全に制御することはできない”ということを理解しました」と述べ、突然エネルギー政策の転換をした。多くのドイツの政党、国民もこれに賛同して、国としての将来の原発ゼロが方向づけられた。物理学者のメルケル首相は「福島第一原発の事故以前は、技術水準が高ければ原子力のリスクを安全に制御できる」と考えていたことになり、それが間違いだったと告白したのだ。

問題にされている「技術水準」とは一体何を指しているのだろう。正確なリスクに気づくこと、気づいたらそれに迅速的確に対応することも含めての「技術水準」と理解すべきだろう。

事故当時原子力安全委員長だった班目氏が「いろいろな仮定を積み上げると、原子炉の設計など出来なくなる」と正直な見解を述べていたが、メルケル首相の「原子力のリスクを安全に制御することはできない」と言う真意は、「原子力のリスクというものは現在解っている範囲であればともかく、仮定や条件次第で予測不能や対応不可能になる」ということだ。まだ隠されているリスク(天変地異やテロのことだろう)が多すぎるので、原発に頼ることはやめたほうがよいと彼女は考えた。

日本が鎖国を解くとともに西欧の科学技術を取り入れ、100年間かけてこれを自分のものとし、世界に冠たる技術水準を維持していることを科学技術発祥の地のひとつであるドイツの首相に評価されたことは誇らしい。だが、実際にはメルケル首相が悩んだような理由で大事故になったのではなく、大津波の警告をされながらそれに対応出来なかった東京電力の組織上の問題、規制当局の役割放棄が大事故の原因であると考える私には、メルケル首相の誤解は面はゆく感じられる。

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