日本エネルギー会議

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冷静な議論

設備というものはいつかは壊れ、人は過ちを犯し、その結果事故が起きる。永遠に無事故、絶対安全はないのだから、何かをすればいずれ事故を起こすことを覚悟しなくてはならない。メリットを求めれば、多少のデメリットが起きてもしかたがないという覚悟が必要だ。であるとしてもデメリットがメリットより小さいことがわかれば、人々はそれをやめる。そのデメリットの重さは事故の確率と被害の程度によるだろう。

福島第一原発の事故が起きるまで、国民の大多数、そして原発の関係者も軽水炉に関してメルトダウンのような大事故の確率は極めて小さいと考えていた。それにメルトダウン事故の被害の程度もスリーマイル島の事故のことを思えばさして大きなものではないと考えていたきらいがある。ところが大津波で一度に3基がメルトダウンし、しかも水素爆発、ベント失敗などで大量の放射性物質が環境にばらまかれるとその発生確率の高さと被害の大きさ、事故収拾の難しさに驚愕した。

国民の大多数、それに原発の関係者も原発の大事故の確率と被害の程度について認識を変えざるを得なかった。その後、過酷事故対策が取られ、現存の原発の事故発生確率は福島第一原発の事故前より少なくなっているが、事故直後に脳裏に刻み込まれた軽水炉の事故確率の認識はそのままだ。また、被害のうち、住民の健康被害はほとんど心配しなくてもよいことがわかったが、これもリセットされてはいない。本来はリセットされて当然だが、国民の多くは「羹に懲りて膾を吹く」状態から脱却出来ていない。

(あつものにこりてなますをふくとは、ある失敗に懲りて、必要以上に用心深くなり無意味な心配をすることのたとえ。羹(肉や野菜を煮た熱い汁物)を食べたら、とても熱くて懲りたので、冷たい食べ物である膾(生肉の刺身)を食べる時にまで息を吹きかけて冷ましてから食べようとしてしまうという状況)。

原発利用のメリットについても、評価の見直しが行われようとしている。政府・自民党や電力会社は2030年の電源構成を検討するにあたって、国際収支、地球温暖化防止、エネルギー安全保障、電力料金の安定化の観点からあらためて原発のメリットについて評価をし、民主党政権が決めた脱原発路線を修正した。しかし、福島第一原発の事故で信頼を失った国と電力会社のやることに、国民の多くは真実が隠され、政策は捻じ曲げられ、原発利権に絡む政治家や経済人が後ろで糸を引いているのではと疑いの眼差しで見ている。あらためて議論をしっかりやろうとする冷静さが必要だ。

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