日本エネルギー会議

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深い議論が必要

10年間まったく進展しなかった原発から出る高レベル放射性廃棄物の最終処分地選定をめぐり、経済産業省が自治体向けの説明会を非公開で開催している。そこでは「科学的有望地」を国主導で提示する最終処分の新たな基本方針が説明されるが、すでに自治体からは拒否反応が出ている。

今回の新たな方針も過去の反省を十分に踏まえたものとは思えず、せいぜい国が有望地を複数同時に公開することで、反対派が名前の出た自治体に対して一点集中で潰しにかかるのを防ぐ程度の効果しかないだろう。最終処分場の問題は究極のNIBYだ。その困難さは原発や研究施設の立地の比ではなく、もっと深い議論を重ねる必要がある。

まず、いままでNIBYな問題で住民が受け入れた実例をよく分析する必要がある。例えば、昨年暮れに福島第一原発の事故で出た汚染土壌などの中間貯蔵施設を大熊町と双葉町が受け入れたが、決断について大熊町長は「我々が受け入れなければ福島県の復興が前に進まないので、先祖からの土地ではあるが苦渋の決断をした」と述べている。「どうせ使えない土地だから、金を貰ったほうがましだ」とは言ってないのだ。また、30年後には他県に移動することも条件にして、永久に失われるという心の痛みをとりあえずは回避している。

迷惑なものの受け入れに対して住民の賛成には立派な理由が必要であり、その決断が周りから賞賛される必要がある。福井勤務で経験したことだが、福井の人たちからすれば、大阪の人から「福井の連中は金が欲しいから危険な原発を引き受けている」とあからさまに言われることを一番嫌うのだ。

韓国で中・低レベルの放射性廃棄物の処分場の決定に際しては、宗教家が「子孫のために責任を果たすのが現世代の道義的責任だ」との主張が誘致を成功に導いた。我が国でも使用済の乾電池を処分する土地を限界集落に決めた例があったが、残った高齢者をひとり残らず町で引き取り安楽な余生を過ごせるようにするという条件が受け入れられた。

処分場は子孫のために必要なものだが、同時に子孫に素敵なプレゼントを贈ることが出来るようにする手もある。例えば、処分場一帯を広大なブナなどの自然林と動植物のサンクチュアリにする。周辺にはモニタリング施設と地下水を常時監視する装置をつけることはもちろんだ。交付金などを住民の希望に沿って地域の子供達の教育や伝統文化継承、あるいは留学制度に使うなど、将来の地域発展を支える人材育成に特化する。政治家に任せた結果、利益誘導で自治体がゼネコンやシンクタンクの餌食になることは絶対に避けたいものだ。

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