日本エネルギー会議

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どんな町にしたいのか

岩手県や宮城県に比べて復興の遅れていた福島県の沿岸自治体の復興がようやく進み始めた。しかし、福島第一原発を中心に避難区域の指定が解除されていないため、まだ紙の上の話である。現在、市町村の議会、役場職員、住民、シンクタンクのアドバイザーなどが参加してさかんに議論がされている。こうしたなかで気になるのが、例によってハコモノが先行しそうなことの他に、前提条件についてしっかりした認識を持たないままに計画づくりをスタートしていることだ。その結果、夢ばかりでとうてい実現が出来ない計画や意見の集約を十分にせず、互いに矛盾した案もかまわず詰め込んだ計画になる恐れがある。

原発事故で長期避難となった地域は、前提条件として少なくとも次の三つはしっかり認識して復興にとりかかる必要がある。
第一に働く人をどのように確保するかだ。日本全体が人口減少と高齢化で生産年齢人口(15歳以上65歳未満)が急激に減りつつあり、働く人の確保がますます難しくなっていく。その中で、除染したとはいえ、放射線の問題を心配しないで帰ってきてくれる元住民や新たに他地域から来てくれる人がどれほどいるのか。生産年齢人口の多くが被ばくに敏感な若い人や子育て世代だ。現在、帰還困難区域を抱える自治体では、帰還すると答えている住民は全体の1割から2割。一番数の多いと見込まれる高齢者が安心して暮らせる町にするにしても、病院、介護施設などで多くの働き手を必要とする。この業界はいまでも大変な人手不足だ。

家に戻ったはよいが、十分な公共サービスは受けられず、不便な生活環境に直面して、人々が再び町を離れていく可能性が高い。新たな人をどのように招き入れるかの方策がなくては計画の実効性は見込めない。働く場所は作れても人々が希望する職種でない可能性がある。川内村など先行して復興を進めているところでは、これが大きな問題となっている。

第二に、財源をどうするかだ。現在まで福島第一原発事故の収束と地域復興のために巨額の国費が投じられてきたが、いつまでも続くとは思われない。やはり地域はある時点で自立するべきだ。帰還する住人の大半は年金生活者であり、住民税や固定資産税などの財源は従来のように期待出来ない。企業に戻ってもらうか他から進出してもらうか。かつての原発関連の固定資産税、事業税、三法交付金に代わる財源がなければ議員や職員の人件費を食いつぶすだけで何も出来ないことになる。

第三に、どんな町にしたいのか、住民がどのように暮らしたいのか住民自らが、イメージを固める必要がある。原発が運転していた頃のように地元にどんどん金を落としてくれる産業があり、立派な公共施設と公共サービスの素晴らしい町なのか。若い人による農林水産業の拡大を目指した町なのか、研究学園都市のようなイメージなのか。再生可能エネルギーを柱に掲げる自治体が多いが、太陽光発電にせよ風力発電にせよ、建設が終われば燃料も人手も税収も原発に比べるとわずかなものだ。

驚くのは「カジノを作ったら」とか「観光を前面に」などという意見が聞かれることだ。国道沿いのパチンコ屋も多すぎると思っているのに、いったい自分たちの生活環境を何だと思っているのか。「観光」も一見華やかで儲かりそうな気もするが、日本中の地方を相手に競争出来るだけの素材や根性を持っているのか。観光客は金だけでなくゴミもたくさん落としていく、休日も騒音や交通渋滞となる。とにかく人が来ればよいと考える人は商売人とタクシー業界など一部の人だ。別に町が全国に有名にならなくても、静かに暮らしたいと思う人も住民の中にはたくさんいるはずだ。町をいくつかのゾーンに分けるという考え方もあるが、主要産業で町の性格が決まってしまう。

以上三つの点をしっかり考えなくては計画倒れになるか、魅力の無い雑然とした住み心地のよくない町が出来るだけで、肝心の住民にそっぽを向かれてしまうだろう。

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