日本エネルギー会議

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記録が語る現場の問題点(8)

福島第一原発の事故現場で恐怖と戦いながら危機的状況を乗り切った福島原発所員の行動記録がある。それは原発事故を防ぐための、また適切な対応を考えるうえの貴重な資料でもある。読んでいくと、所員たちが何に対して、どのように困ったかが端的に伝わってくる。青字は記録、黒字はそれを読んで考えた私なりの指摘である。

【中央制御室内仮設照明の復旧作業】
・復旧班は、中央制御室の照明が失われていたことから、発電所対策本部の指示により、各中央制御室の照明確保に向けて、復旧班3~4名、協力企業7名で作業開始。
・構内協力企業が工事用に所有していた小型発電機を1,2号機・3,4号機とも原子炉建屋山側の変圧器等が設置されている変圧器エリアに設置。
・小型発電機から1,2号機及び3,4号機中央制御室まで電工ドラムをつないで仮設照明に接続。20:47 に1,2号機中央制御室,21:27 に3,4号機中央制御室に、ごく一部ではあるが仮設照明により明かりが点された。
・その後、小型発電機に定期的に給油を実施した。

指摘事項16
1.
移動式発電機の運転に必要な軽油、重油などの備蓄量、備蓄場所、給油方法などを検討し複数を配備するとともにその取り扱いについて教育訓練をする必要がある。
2.
ケーブルや工具などの備蓄について検討し、その場所を決めておく。また、扱える要員を教育して確保しておく必要がある。
3.
停電後直ちに出して使えるバッテリーと照明スタンドを建屋内各所に配備しておく必要がある。

【中央制御室内計器類の復旧作業】
・復旧班は、中央制御室内の計器類の復旧のために、必要な図面の用意、構内の企業からバッテリーやケーブルの収集を始めた。2~3名一組で免震重要棟から徒歩で協力企業事務所へ向かい、収集できたバッテリーを協力企業から借りた業務車に積み2,3号機間のゲートを通って、1,2号機中央制御室に運搬した。
・収集できたものから順次中央制御室に運び込み、図面の確認を行い、1,2号機中央制御室の計器盤への接続を開始。原災法第15条事象『非常用炉心冷却装置注水不能』が発生し、原子炉への注水状況を把握することが最優先だったことから、直流電源で動作する原子炉水位計から順次バッテリーを接続し、復旧作業を始めた。
・作業場所である制御盤裏は、中央制御室の仮設照明設置後も照明が届かず真っ暗であったため、手持ちの懐中電灯の明かりを頼りに配線図とケーブル番号の確認や配線の端末処理及び接続作業を実施。
・21:19に1号機、21:50に2号機の原子炉水位が判明した。
・その後も構内にある業務車からの取り外しや、自衛隊ヘリによる広野火力発電所からの輸送などバッテリーの調達を継続した。

指摘事項17
1.
直流電源の必要量、必要な場所などを検討し、非常時に備えて適正に配置しておく必要がある。バッテリーは十分に容量を持たせておく必要がある。
2.
図面の管理が適切か、追加の図面の必要性について検討する必要がある。
3.
予期せぬ作業のために要員には余裕を持たせておくことが必要である。

【柏崎刈羽原子力発電所による支援】
・柏崎刈羽原子力発電所では震度5弱を観測したことから、発電所長他、非常災害対策要員が免震重要棟に集まり、設備の健全性確認等の対応を行っていた。TV 会議を通じて、福島第一・第二原子力発電所の置かれている状況を把握。柏崎刈羽から福島第一・第二に対してどの様な支援が出来るのか考えて行動するよう発電所長指示が出され、各部署で検討を行った。放射線管理、消防車は、特に支援の必要性が高いと考えられたことから、各部署で派遣の準備が進められた。
・放射線管理の支援要員は、保安班員15名と運転手2名の計17名。マイクロバスタイプのモニタリングカー1台、マイクロバス1台を用意し、保護衣等放射線防護上必要な資機材や食糧を準備して車両に積み込んだ。福島第一からの支援要請もあり、11日19:30頃出発した。
・福島第一までの道路状況が不明であったため、どちらか一方だけでも到着できるよう、モニタリングカーとマイクロバスは別々のルートを通って発電所
に向かった。幸いにも両ルートとも通行が可能であり、発電所近辺の当社寮で無事に合流することが出来た。
・12日2:49、支援要員が福島第一の正門に到着したことが発電所対策本部で報告された。支援要員は持参した資機材を免震重要棟1階に運び込むとともに現地での活動内容について保安班長と相談。免震重要棟出入口にて、作業員の装備の着用確認・着脱補助、現場から戻った人の汚染検査、免震重要棟出入口の二重扉の開閉の管理を行うこととした。また、モニタリングカーを出動し、発電所にあったもう一台とともに屋外の線量測定を開始した。
・消防車については、柏崎刈羽に配備していた3台のうち、2台を福島第一に仮設バッテリーをつないで計器用電源として使用 懐中電灯の明かりを頼りに指示値を確認派遣出来ることを確認。消防車による消火活動を委託していた協力企業と相談し、消防車のオペレータを福島第一に派遣することについて了承を得た。
福島第一からの支援要請もあり、準備が整い次第、福島第一に向けて順次消防車が出発。11日21:44 に1台、22:11にもう1台が出発したことが発電所対策本部で報告された。
・その後も、柏崎刈羽は福島第一・第二に対して、多くの人員、資機材を支援した。福島第一の状況が悪化する中でも支援を継続し、現地で一緒になって対応した。

指摘事項18
1.
各電力会社のサイト間、および近傍の他電力会社のサイトに対する相互応援体制、通信手段をあらかじめ決めておく必要がある。必要に応じて、パトカーなどによる先導、ヘリコプターによる輸送も依頼することが出来るようにしておく必要がある。
2.
支援のための資材、要員についても要請により直ちに出発出来るよう、普段から準備しておく必要がある。
3.
発電所員は、日常から隣のサイトに出向いて発電所の配置、構造などを学ぶことが出来るような教育機会を持つようにする必要がある。
4.
免震重要棟の出入り口の扉故障があり、手動で管理されたがあらかじめ手順などを定めておく必要がある。また、免震重要棟の外部が汚染されている場合に備えて出入り管理のための手順、設備などを準備しておく必要がある。
5.
発電所所属のモニタリングカーを増やしておく必要がある。
6.
緊急時に必要となる協力会社の支援について、あらかじめ契約をし、要員の確保も依頼しておく必要がある。
7.
応援要員を出す場合、発電所に何人を最低限残すかについてあらかじめ決めておく必要がある。(自らの発電所の緊急事態に備えて)
8.
今回の支援についてさらに詳しく内容を検討して、支援内容に問題がなかったか点検して今後の対策に活かす必要がある。
9.
支援部隊に対する指揮命令系統、権限などをあらかじめ明確にしておく必要がある。

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