日本エネルギー会議

  • 設立趣旨
  • お問合せ

疑心暗鬼のもと

福島第一原発2号機の建屋屋上に溜まった高濃度の汚染雨水が排水路を通じて港湾外に流出していたが、東京電力は排水路の放射性物質濃度の上昇などで流出の可能性を昨年4月から把握しながらデータを公表しなかったことが波紋を広げている。福島県の内堀知事は「極めて遺憾」とコメント。

県廃炉安全監視協議会が福島第1原発に立ち入り調査することにした。説明を受けた県漁連からは、以前から把握していながら公表しなかった東京電力の姿勢に対して「サブドレンどころではない。これまで互いに信頼してやってきたが、もう信頼出来ない」と強い反発があった。今回の問題は、「東京電力は、あいかわらず体質が変わっていないようだ」という印象を県民に与えてしまった。

排水路の放射線測定値の異常は、東京電力の現場管理職レベルなら知っていて当然と考えていたら、本日付の福島民友の記事で廃炉現場のトップも承知していたことがわかった。それによれば、福島第一廃炉推進カンパニーの増田尚宏最高責任者は会見で、東京電力は昨年1月、原子力規制委員会の専門家検討会でこの排水路から採取した水の放射性物質濃度の測定結果を報告。この時点で(高濃度の雨水が検出されていとの)問題意識を持ったと述べ、当初説明していた昨年4月より前の昨年1月には問題を把握していたことを明らかにしたとある。

このとおりだとすると、東京電力だけでなく原子力規制委員会までがデータの公表について十分な認識を持っていないことがうかがえてぞっとする。もちろん東京電力の本社も知っていたことだろう。昨年1月の時点でデータ公表をためらった原因は何だったのだろう。それを解明して、その時の判断が誤りであったことを共通認識としなければ、今後も同じ問題が起きる確率は100パーセントだ。

東京電力は原子力規制委員会に報告しているから、「公表すべき事実を社内に留めてしまった」という非難は当たらないのかもしれない。増田氏は「原子力規制委員会には報告しており、東京電力としては隠蔽はしていない。原子力規制委員会でも、それほど問題にされなかったので公表の必要はないと判断した」と言い逃れることも可能ではないか。

ところが、25日のNHKの報道によれば、原子力規制委員会の田中俊一委員長は会見で、「今回の問題だけではなく、原因が分かるまで時間がかかる場合もあるので、現象の重要性を考えて速やかに事実を発表するべきだ。反省すべきところは反省しないといけない」と述べ情報公開の姿勢を批判したとある。

1月の原子力規制委員会の専門家検討会では問題にしたのに、何故そのあとフォローしなかったのか。何故、専門家検討会での東京電力からの報告は規制委員会から公表されなかったのか。その後も何故、東京電力に追加報告を強く求めなかったのか。原子力規制委員会こそ、規制当局としての姿勢や情報公開不足を批判されなくてはならない。もし、規制委員会よりなんらかの公表がされていたとすれば、今頃になって隠していたという話にはならないはずだ。

河北新報によれば、「放置していたわけではない。委員会側にまったく責任はない」と委員長は発言しているようだが、規制委員会として追跡が不十分だった点を認めるべきだ。ただ、電力会社と規制当局の情報量は非対称で、電力会社が圧倒的に多くの情報量を持つので、規制当局はその分頑張らねばならない。

今回のようなことになると、国民は福島第一原発の事故前と同じように電力会社と当局の関係がおかしいのではないか、規制当局は東京電力に強く出られない弱みを持っているのだろうか、規制当局のミスは電力会社が引き受けて当局に貸しをつくることにしているのではないかと疑心暗鬼に陥る。

  • データベース室
  • エネルギーとは?
  • 世界と日本のエネルギー
  • 原子力の論点
  • 放射線と健康