日本エネルギー会議

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果てしない大地

昔、アメリカのカンサス州にあるウォルフクリーク原発を訪問した際に、地元の人が「ここには一生の間、山も海も見たことのない人がいる」と聞いて驚いたことがある。日本では北海道でもそんなことはないだろう。アメリカの下発は大平原の真っ只中にあった。

JICAの仕事でロシアのバラコバ原発を訪問した際、いちばん近くの都市であるサラトフから、穴だらけの道路を何時間もベンツのワンボックスカーに揺られて行った経験がある。どこに発電所があるのかと聞くと「この道に並行して送電線が見えるだろう。その送電線の先に原発がある」と答えが返ってきた。どこまでも続く砂漠のような地平線の先を目で追ったが霞んで何も見えなかった。ソ連時代に地方に若者の働く場所をつくる目的で、意図的に何もないところに原発やコンビナートを建設し、それに合わせてそこで働く人の居住する町を人工的に作ったそうだ。

日本の原発はすでに町や村があるところに作られる。東海にせよ福島にせよ、国道6線はまだ砂利だったが、周辺住民が数万人はいた。日本の場合、過疎であるだけで海岸線に無人地帯はありえない。しかも、建設が進み営業運転が始まると、他の地域が人口減少に苦しむなか、人口増加と平均年齢の若返りさえ果たしたのである。

福島第一原発の事故時に大勢の住民が避難しなければならなかったことから考えるとこれは政策の誤りであり、形式的な周辺監視区域に留まらずもっと広く敷地を確保し、さらにできる限り周辺の人口が増えないようにする必要があった。できれば原発から5キロ圏内はすべて自社の所有地とし自然公園にしておくべきだった。また、10キロ圏内は新たに住居を建てることを制限するべきだった。そうしておけば中間貯蔵施設の土地も問題はなかった。

福島第一原発の事故で、東京電力は不動産の賠償に数兆円を支払うが、それだけの金があったら最初から買収しておけばよかった。現時点で、原発の新設に最も適しているのは、周辺の人口密度からすれば、福島第一原発7、8号機の建設候補地である。もっとも東京電力は不動産の賠償を事故当時の評価額で支払い所有権の移転は求めていないので、今だけの話だ。

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