日本エネルギー会議

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集中と分散

「高い、低い」、「重い、軽い」。反対語は対比であり比べることで、それぞれの長所短所も見えてくる。そこで、エネルギー供給や電源を「集中、分散」という観点から考えてみよう。

1基100万キロの原発はまさに「集中」型電源であり、再生可能エネルギーの太陽光発電や風力発電は「分散」型だ。原発のエネルギーの集中度を説明するのに、原発1基分の電力を供給するにはソーラーパネルを山手線の内側全てに設置する必要があるという例がよく使われる。集中型の原発は人口が多く、土地が高い都市部にはつくることは万一の際の避難計画の策定や経済性からも難しいことから、遠く離れた所に建設し消費地まで長い送電線を必要とする。

原発は大出力だけに順調に運転出来れば大きな利益が上がるが、停止すれば供給に穴が空いて大損失をこうむるリスクがある。集中しているためテロや自然災害のひとつの攻撃で大打撃となる。長い送電線もテロリストにとっては好都合だ。福島第一原発の事故以降、一つのサイトに多数基設置することも事故対応を複雑かつ困難にするリスクがあると指摘されている。「分散」型ではリスクも分散されているので、いくつかは生き残れるためゼロにはなりにくい。

分散型の欠点は経済性が劣ることだが、機器そのものは小型であるため大量生産ができる。大量に作ることで製造コストや性能が、年とともに改善される可能性が十分にある。一つ一つは小さなため交換も容易で、メンテナンスもしやすい。電気を使用する場所に限りなく消費地に近いところに置くことも可能であり、送電に関するリスクも少ない。原発が一時期に巨額投資が必要なのに対して、投資を逐次投入出来るのも強みだ。ただし、太陽光や風力は出力が不安定なため、バックアップ電源や蓄電池を必要とする。原発を小型化して分散しておくことも技術的には可能であるが、大型化し経済性をさらに向上させるのが世界の趨勢だ。

かつて地球環境が激変した際に、大きな恐竜は絶滅し小さな穴にも入れた小動物が生き残った。戦艦大和や武蔵を造ったころ、既に世界は身軽な航空機による戦いに移行していたため、最後には巨費を投入した戦艦も活躍の場がないまま、海の藻屑と消えてしまった。環境や条件が落ち着いている時代には集中型が有利だが、自然災害や戦乱が多発する時代、そして技術進歩が激しい時代には身軽な分散型が有利だ。「集中と分散」の観点からすると、これから先の見えない時代に原発が生き残っていくためには、相当の努力が必要だということが解る。 

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