日本エネルギー会議

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けじめと意地

新しく福島知事になった内堀氏は、前知事の佐藤氏同様、東京電力の広瀬社長に対し「県内原発の全基廃炉は県民の強い思い。事業者としてしっかりと受け止め、対応してほしい」と福島第二原発を含めた県内全ての原発を廃炉にするよう要請しているが、広瀬社長は「状況を見ながら事業者として決断していかなければならない」と述べ、明確な返答を先送りし続けている。

先の衆議院選挙では自民党を含め全候補者が、福島県内の全原発廃炉を公約した。事故から4年近くも経つが、避難者が12万人もいては福島第二原発の再稼動には触れられないと判断したのだろう。私の避難先である須賀川市のショッピングモールで自民党の候補者の応援演説をした安倍首相も、アベノミクス一点張りで原発再稼動についてはとうとう触れず仕舞いだった。

福島第一原発の事故は福島県民に大損害を与えた。双葉郡では多くの人が原発関係の職場に雇用され、自治体も財政的に大きな恩恵を長年受けてきたため、複雑な感情があるが、故郷を汚染され中間貯蔵施設を建設されることで帰ることの出来ない土地になった恨みは大きい。

双葉郡以外の地域の県民は特別な恩恵も経験しないまま、突然放射線の不安にさらされ、今も除染、廃棄物の仮置き、風評被害に悩まされている。この怒りは、他の立地県において見られるように、原発から一定の距離を置いた地域ほど再稼動に反対が多いのと同じである。

大多数の福島県民は、あの事故について、「未曾有の天災が原因で仕方が無かった」という結論では納得しない。少なくとも国や東電において事故や避難の対応に糾弾されてもしかたがない点があったこと、その裏に住民の安全をないがしろにして準備を怠っていた事実があったことは明らかであり、その部分についてけじめがついていないと思っている。泉田新潟県知事が東電を批判し、「原発事故について原因分析も不十分、社内処分もない」と語っていることに同調する人も多い。

今回の選挙でも事故当時政権の座についていた民主党、それ以前に政権を担当し、また民主党の跡を引き継いだ自民党のいずれの候補者からも、事故に対する責任を認めお詫びするとの言葉はなかった。広範囲な賠償が行われ、県内の復興景気もまだ続いているが、原子力安全委員会が廃止され原子力規制委員会が出来たこと、東電の幹部が交代したことで幕引きがされ、責任追及の場は設けられず、県民の不満は鬱積したままだ。これが形を変えて「意地でも県内全原発廃止」につながっている。

事故の風化、各県から福島へ汚染土移動の話、風評被害がいまだになくならないこと、各地で地元からの再稼働要請が相次ぐことなど、福島県民の気持ちが逆なでされ続けている中で、福島第二原発はスケープゴートにされようとしている。

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