日本エネルギー会議

  • 設立趣旨
  • お問合せ

高速道とストロー現象

福島第一原発のある福島県浜通り地方にとって今年最後の話題は、衆議院議員選挙を除けば、来年3月1日に常磐高速道の全面開通することだ。これで東京、仙台間を太平洋側でつなぐ高速道路が着工以来45年の歳月を経てようやく完成する。

今月6日に二区間が開通し、残りは常磐富岡から浪江の区間だけとなった。この区間は、福島第一原発の事故により避難区域となっており、国道6号線とともに、常磐高速道も立ち入りが制限された区域を縦断するかたちだ。今まで磐越道と東北自動車道を使い迂回する形で仙台とつながっていた浜通り南部の市町村の人々が直接仙台市に行けることになった。津波被害のためにJR常磐線がこの区間いまだに不通となっており、その点からも高速道の開通の意義は大きい。ただ、肝心の原発周辺の住民はいまだ帰還しておらず、全線開通の恩恵には浴せない。

完成した常磐自動車道は、いわき市以北が片道一車線で中央分離帯もなく、車両は時速80~100キロで行きかうので、実際に走ってみると実に走りにくく危険な道。サービスエリアも少ない。全線開通した常磐高速道は、福島第一原発の廃炉関係者にとっては東京方面、あるいは仙台方面から現地に行くのに便利だが、地元住民が浜通りの北部と南部を行き来するのには、もっぱら通行料金のかからない国道6号線が使われそうだ。

常磐高速道開通によって今まで東北自動車道のみに頼っていた関東から東北への物流ルートが二重となることで、東北地方で災害時の対応に柔軟性が出る。、浜通りの各自治体は企業誘致をする際に交通の不便さで不利であったが、これも解消される。

杜の都仙台市は、東北ではずば抜けた人口と商業施設がある都市であり、青森、盛岡、秋田、山形、米沢、福島など東北各地から乗り入れている高速バスを市の中心部で数多く目にする。東北新幹線も使えるが、運賃の安さから買い物客は高速バス利用が一般的だ。比較的近い福島市や南相馬市あたりからは、マイカーで仙台市に行く人も多い。高速道を利用すれば浪江町からは1時間半程度で仙台に行けるようになる。浜通りに住む人の利便性は格段に増した。

では、仙台方面からいわき市など浜通りへの買い物客や観光客が増えるかといえばそれは疑問だ。魅力のある商業施設や有名な観光地はほとんどが仙台市周辺にあり、福島県に出かけるとすれば東北道を使って、猪苗代湖や会津若松市になる。

高速道路などが出来て交通の便がよくなると住民が買い物、就学、通院など大都市に行くようになり、地元の商店街などが寂れてしまうことを「ストロー現象」と呼ぶ。今後、福島県の浜通りが復興していっても、この「ストロー現象」によって、戻った住民の消費を仙台市の商圏に吸い取られてしまう可能性がある。事実、北部の相馬市、南相馬市ではこれを心配する人も多い。高速道路の開通にも地元は悲喜こもごもだ。

  • データベース室
  • エネルギーとは?
  • 世界と日本のエネルギー
  • 原子力の論点
  • 放射線と健康