日本エネルギー会議

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設備利用率あれこれ

電源のベストミックスなどの議論で出てくる「稼働率」という言葉の定義が曖昧なまま使われていることが気になる。「稼働率」と同じようによく使われる「設備利用率」が定格出力でフル操業した場合の発電量を100パーセントとして実際に発電した量の割合を示すのに対し、「稼働率」は出力の多寡にかかわらず、発電していた時間の割合を示すものだ。再生可能エネルギーのうち、風力発電やソーラー発電は絶えず出力が変動し夜間は出力がゼロになる。ソーラー発電の場合、曇っていても昼間は若干発電するから「稼働率」は50パーセント近くなるが、その「設備利用率」は12パーセントにとどまる。風力発電も「設備利用率」としては20~30パーセントだ。

これに対して原子力発電、火力発電、水力発電、バイオマス発電、地熱発電などは定格出力で24時間フル操業可能なため、ベースロードに入れば「設備利用率」は定期検査などを考慮しても年間で80パーセント程度になるはずだ。ところが、実際には福島第一原発の事故前のわが国の火力発電の年間平均の「設備利用率」は50パーセントを切っている。これは火力発電が主にミドルあるいはピークロードを受け持ち、需要が少ないときは出力抑制あるいは停止させられていたためだ。  

一方、原発はベースロードに入れられており、「設備利用率」80パーセントでよさそうなものだが、実際には事故・トラブル・不祥事などで70パーセント程度にとどまって実力を発揮出来ないでいた。これも一種の人為的な理由だ。同じ原発でも下図に示すように高浜原発のようなPWR(加圧水型)が80パーセントであるのに対して福島第一原発のような沸騰水型(BWR)は60パーセントにも届いていない。

風力発電やソーラー発電は不安定な電源と言われ、一方、原発はベースロードに当てられるほど安定的な電源ということになっているが、実態は一つの原発で事故が起きると、たちまち他の原発にも波及して点検改修のために長期停止ということになりがちだった。そうであれば原発の出力はオール・オワ・ナッシングで供給上の当たり外れが非常に大きくなる。原発のために火力発電などバックアップを準備しておくためのコストは余計なものだ。福島第一原発の事故で全原発が停止していても停電にならなかったのは節電もあったが、東京電力などが旧式火力を廃止せずに温存しておいたおかげだ。

経済産業省は今年6月に「新エネルギー小委員会」を設置。有識者などで再生可能エネルギーの課題を検討してきた。最近の会合では、再生可能エネルギーの接続保留問題について解決策を議論しているが、結論としては原子力発電をベースロード電源として優先的に使うとしている。その理由としては次のようなことがある。

(1)一基で大出力である(2) 定格出力を連続で出せる(3)負荷追従運転が苦手(4) 起動に時間がかかる(5)設備投資の償却費が大きく燃料代が少ないのでなるべく運転させた方が経済的(6)運転やメンテナンスに多くの人員を張り付けている(7)地元への三法交付金の半分は発電量とリンクしている(8)設備利用率が上がることで、原発の存在感を示すことが出来る 

4年ぶりに再稼働した原発が、事故トラブルで設備利用率が上がらないようなことがあれば、再生可能エネルギーを手がける企業側から、原発をベースロードから外せとの声が上がる可能性がある。

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