日本エネルギー会議

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社会とのズレ

日本人の多くは、安定した電力供給が今日の社会に不可欠であること、原発が地球温暖化防止に有効な手段であることは理解しているが、一方で、有限であるエネルギーや資源を大量に消費する社会のあり方、高レベル放射性廃棄物の処分先が決まらないまま原発が増えることに対しても疑問を感じている。再稼働によって原発による安くて安定した電力供給という選択肢が使えるようになることは、日本社会にとって歓迎すべきことであると考えるのが一般的であるが、原発が三年半も停止しているにもかかわらず、停電どころか数値を伴う需要抑制が行われていないことで、再稼働にこだわる政府や電力会社の姿勢の裏側に何があるのかを疑う人々もいる。

日本で原子力開発がスタートした時代は、地球温暖化の問題もなく、高レベル放射性廃棄物もそのうち処分場が見つかるという希望的観測だった。当時は、今の途上国のように戦後復興、経済成長のために安定した電力を確保することが一番大切なことであり、それを叶えてくれる原子力は国民の期待を集めていた。人々が求めていた社会は、経済成長によって多くの国民が所得を増し、物質的に豊かな生活を送れるようにすることであり、物質的に豊かになれば人々が欲求を満たし、それが精神的な豊かさにつながると単純に考えていたふしがある。

その後、人口や勤労世代も増加し、日本経済は高度成長を続けジャパン・アズ・ナンバーワンと囃し立てられた。やがて成長は止まり高度成長のひずみが明らかとなり、人口減少、高齢化が始まる。リーマンショックを発端に世界同時不況のなか、政治経済での中国の存在の増大、工場の海外移転、格差の拡大が進むなど日本国内は次第に逼塞感が強まり、地球温暖化の影響も深刻化しはじめ、日本人も先進国の人々とともに、次第に経済成長、弱肉強食の市場、グローバリゼーション、富の偏在、エネルギーや食糧の爆食、際限のない都市化や自然破壊などに不安や懸念を抱き始めている。

これに対して原子力開発に携わる人々は、人類の幸福に貢献する科学技術の勝利の最も輝かしい成果として、「高速炉を使えば2000年間のエネルギーが手に入る」との熱狂をいまだに持ち続けている。彼等は、人々が今でも無限のエネルギーを求め続けていると誤解したままであり、現在持ち上がっているいろいろな問題も将来必ず解決出来るものであり、あらゆる障害を克服して原子力開発を進めることしか、資源の枯渇、温暖化、エネルギーの奪い合いを防ぐことは出来ないと考えている。そのためか省エネ、ネガワット、再生エネルギーなどについて、どちらかというと冷淡である。それは世界共通であり、あたかもキリスト教布教のミッションを抱いた宣教師のようである。不思議なことに目指す方向は真逆だが、この使命感と一方的な方向性は原子力反対を唱えて行動している人々も同じである。

原子力推進あるいは反対を唱えている人々の思いが、多くの人々が現在求めている社会のあり方とかなりずれていることは明らかであり、このことは、政府が「原発を重要なベース電源と位置づける一方、可能な限り原発比率を押さえ込む」という矛盾に満ちた方針を出さざるを得ないことに端的に表れている。

混乱の原因は思考の順序にある。電気を何で作るのかではなく、エネルギーを使うことを含めて人類社会がどのようにあるべきか、そして次世代のためにどのようなことをするべきか、その中で日本がどのような役割を果たすべきなのかという議論を後回しにしていることだ。

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