日本エネルギー会議

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発災型防災訓練の効果

福島第一原発の事故で、印象に残ったのが「全電源喪失したために、計器も見ることが出来なくなったので、急遽駐車場に停めてあった通勤車両からバッテリーを外して中央制御室に持ち込み、何台かをつないで使った」という経験談だ。ついでに、何十キロ離れたいわき市までバッテリーを買いに行くのに現金がないので、皆の財布から現金を供出したという話もあった。車のバッテリーの存在に気づいたから良いようなもので、これに気づかなければさらに原子炉水位などの確認に手間取ったことだろう。このようなエピソードは東京電力の発表した記録のなかから数多く拾える。

前回、原発の防災訓練は従来の集合型訓練に、シナリオなしの発災型防災訓練を取り入れるべきと書いたが、シナリオなしの訓練の効果をまとめると、次のようになる。

(1)
発災型は事故の実体験に近いものが得られる。困難なだけにやりがいもあり心身ともに鍛えられ、自信につながる。本番さながらの緊張感があり、本番であわてなくなる。マニュアルに拘泥することなく、手持ちの資機材、人員で臨機応変に対処出来る自信がつく。どのような事態になってもあきらめず対応しようという不屈の精神が植えつけられる。

(2)
現在、準備として何が不足しているかが判明する。人数、編成、設備、道工具、エネルギー源、マニュアル、取扱教育、予備品、部品、修繕道具、通信手段、記録手段、防護具、車両などと、その点検頻度、点検内容、訓練回数、訓練内容などにもフィードバックが掛かる。設備や道具の構造、性能に対する知識不足がわかり、用意してあるものの性能や用途の限界を知ることが出来る。重要対策機材の配備場所なども確認することが出来る。

(3)
自分たちの持っている事故対応能力がどの程度のものかわかる。誰がどのような能力を持っているか、訓練なしでは使いづらい設備や道具がわかる。不足する能力を理解し、これを充足するためのさらなる知識や技能の習得目標が出来る。集合型訓練の成果も試される。

(4)
自分の仕事の範囲、持ち場を超えて協力しあえるようコミュニケーション能力がつき、チームワークがよくなる。事故時の協力について互いに了解が得られる。外部とのコミュニケーションについての問題点もわかる。

(5)
マニュアルどおりにしなければならないという凝り固まった観念を打破することが出来る。何故そのようにするかという理由は知らなくてもマニュアルどおりにやればよいというかたくなな考え、効率優先では対応出来ないことがわかる。発想が柔軟になり、好奇心やアイデアも出てくるようになる。手段の組み合わせ。機材の本来ではない使い方。さまざまな原理などを自主的に知ろうとするようになる。

(6)
回数を重ねる毎に、より困難な条件で訓練出来るようになる。どのような条件を出すと、どうなるかがわかるようになる。訓練であるから思い切り失敗をしても実害はない。(自信喪失はあるかもしれないが)
 
この発災型訓練も欠点がないわけではない。特に時間と費用が掛かるし、怪我などをする危険性もあるが、発災型をやらなければ本当の意味での実力はつかない。発災型訓練をやることは、事故による被害を受けることになる従業員や周辺住民に対する当事者の責任でもある。 

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