日本エネルギー会議

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安全の空白地帯

NHKをはじめとして各テレビ局とも、原子力規制委員会の審査に川内原子力発電所が実質的に合格したことを一斉に報じた。このあと、地元の同意や設備の検査などを経て10月以降に再稼働する見込みともコメントしている。記者会見で原子力規制委員会の田中委員長は、「防災計画についてはあくまで自治体の仕事」という立場を改めて強調した。再稼働の判断について経産大臣が「事業者の判断」とした一方、安全については官房長官が「国の責任」と一歩踏み込んだ発言をした。

国は地元の実情が判っている自治体が防災計画を作成し、実行するのが一番だとしているが、各自治体の能力にはばらつきがある。メディアは、自治体に預けられた形の「防災計画」の作成が各地で困難に直面しており、特に弱者の避難のための運搬手段の確保や、自然災害による道路の遮断などに対処出来るものとなっていないのではないかと指摘している。自治体の作成した防災計画が適切なものであるか、十分に実戦に耐えうるものかは誰が判断をするのかという点にまで踏み込んだ報道は少なかった。

原子力規制委員会が各原発の基準適合を審査するようになっているのであれば、防災計画についても、これを審査する仕組みが必要だと思う。自治体がいわば自作自演する防災計画は、防災の専門家によって全国共通の基準でかつ個別の地域性も考慮した形で審査することが大切だ。大学教授ばかりでなく、消防、警察、海上保安庁、気象庁、自衛隊、発電所長経験者などの現場に強い専門家とともに、福島第一原発の事故で貴重な経験を積んだ福島県内の首長や防災担当者、それに医療関係者をメンバーにすることも有効ではないか。

田中委員長はあくまでも、防災計画にはかかわらないつもりのようだが、そうはいかない。福島第一原発の事故で、周辺の各町村は国や県でなく、原発から直接「避難してほしい」との連絡を受けて住民避難に動いた。また、記録によると発電所ではベントにあたって、大熊町の住民の避難が完了したかどうか確認を取っていた。このことから考えれば、国と事業者が行う事故そのものの収束対応は、当然に自治体の行う防災計画に基づく住民の避難との関連が出てくる。アメリカの規制委員会がやっているように、国や事業者と自治体のコラボレーションが必要であることは言うまでもない。

福島第一原発の事故では、そのコラボレーションがまったくとれていなかったことが悲惨な結果を産んだことを、関係者はもう忘れてしまったのだろうか。

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