日本エネルギー会議

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御薬園

福島県浜通り地方の観光は、被災地を見て歩くダークツーリズムは別として、原発事故と津波の被害でいわき市を除いてまったく立ち直る目処すら立っていない。この地域の景観はもともと海岸に変化に乏しく、平板な印象である。相馬市には松川浦という景勝もあるが、それとて宮城県の松島とはスケールが違いすぎる。縄文時代からの遺跡は豊富だが、相馬の野馬追い以外は戦国時代から現代にかけてもこれといったドラマ性がない。東北にしては温暖な気候が代表するように平板な印象である。

島県中通り地方も商業的雰囲気が強く、芭蕉の奥の細道に登場する奥州街道沿いも、山形県の立石寺のように昔の面影を伝えるものは見当たらない。白河の関や智恵子抄の「あたたら山」などでは多くの人を惹きつけることは難しい。福島市の花見山、須賀川市の牡丹園などもあるがその時期だけのものである。温泉も多いが、草津、有馬などメジャーとは言えない。

最も観光資源に恵まれているのが大河ドラマ「八重の桜」の舞台となった会津地方だが、東北本線や東北自動車道からさらに1時間ほど奥にあり交通が不便なのが惜しい。磐梯山に猪苗代湖、五色沼など自然は豊かであるが、手つかずの自然というのではなく、かといってよく手入れがされているのではない。スキー場も雄大なゲレンデに粉雪というわけにはいかない。磐梯山の山肌にはスキー場がいくつも刻まれていて痛ましい感じさえする。猪苗代湖畔には浜もあるが、以前から飲食店や土産物屋などは廃れたままである。これは原発事故のためばかりとは言えないだろう。

先日、会津若松市の御薬園(おやくえん)に行って来た。一番の観光スポットである鶴ヶ城に近い会津藩歴代藩主の別邸で、薬草を採るために作った江戸時代の植物園が併設されている。庭園は元禄時代に造られた代表的な大名型山水庭園として国の名勝に指定されている。残念なことに、石や池に対して植えられている樹木が大きくなりすぎて庭園としてはバランスを欠いている。池の水も澱んで水辺の清々しさがない。多分、長い間十分な手入れをしなかったためだろうが、京都の寺社の日本庭園は職人達が毎年枝を詰め、老木の脇に若木を植えて美しさを維持している。それから比べるとせっかくの名勝も価値が下がっている。このような場所にはよくある素朴な茶店もないし、どうしてもここで買いたい土産物もない。

南会津には通りの両側に茅葺き屋根の民家が建ち並ぶ「大内宿」がある。その景観は全国的にも珍しく、休日には観光バスなどもたくさん来て、大いに賑わっているが、売っている土産物がどれも特色がなく、都会の目の肥えた人々が欲しがるようなものはない。観光客は昔にタイムスリップした風情を楽しみ、カメラを向けるが、単にそれだけで終わっている。

ご当地グルメの先駆者である喜多方ラーメンも、有名店に都会からの客が集中し、休日ともなれば行列が一日中続くが、県内の人たちはかつてのような味ではなくなったと言って、これらの店にはあまり行かなくなっている。業界が現状に満足しているとすれば、それは間違いなく衰退の始まりである。福島県は、ほとんどの地域で人口減少が予想され、消滅の危機にある町村もある。人手不足が観光業や飲食業を直撃すると思われるが対策はあるのか。

福島県の観光は浜通り地方を除き、原発事故の風評被害から3年でほぼ立ち直ったが、県は来年4月から「ふくしまプレデスティネーションキャンペーン」を展開し従来よりプラスとなることを目指している。観光とは「光を観る」と書く。本格的な観光立県となるには、脱風評被害だけでなく、素材を光輝くように磨き上げる努力が不足していることに気づくことが必要だ。 

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