日本エネルギー会議

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好まれない理由

どんなものにも長所と短所がある。原発の長所短所とはどのようなものだろうか。電源の長所、短所を独自の9項目で評価していくと
(1)経済性
 核分裂による熱を利用することで抜群に効率が良い
(2)安全性
 重大な事故の確率はかなり低い。万一の対処も可能だが、失敗すれば社会的混乱など重大な結果をもたらす。
(3)環境負荷
 炭酸ガスはほとんど排出せず、廃棄物処分は技術的に可能。
(4)安定性
 出力、稼働率、燃料供給ともに安定性がある
(5)即応性
 建設期間は数年間。停止状態から発電するまで数日でよい。
(6)技術的難度
 日本の技術力で問題はない。
(7)必要資金
 巨額ではあるが、長期間安定した運転をすれば回収可能。
(8)立地の制約
 日本に適地は少ないが、既にあるサイトに増設も可能。
(9)人々の受容
 人々の間に、核に対する嫌悪感、放射線に対する拒絶的な考えから原発を受容を出来ない人がかなりいる。

項目(2)(9)以外は、原発が優れた電源であることを示している。特に資源小国である日本にとって、経済性に優れ、燃料供給が安定していることは特筆すべき長所だ。しかし項目(9)で人々に好まれないことが、建設に入るまでの期間や一旦停止した際の再稼働、廃棄物処分立地の困難さに影響を及ぼし、とにかく何をするにも時間がかかるようになっている。それが最大の短所といってもよく、せっかくの長所である抜群の経済性などを帳消しにしかねない。

人々に好まれない理由としては、核への嫌悪感と放射線への恐怖感がある。それらは原子力開発の当初から存在し、事業者は、それをなかなか払拭出来ないままに、チェルノブイリ事故や福島第一原発の事故によって追い討ちを掛けられた感がある。

爬虫類を好まない人は多いが、私自身もその一人だ。理由はと聞かれると説明が難しいのだが、本能的なものであり、一説には恐竜時代に人が経験した恐怖感が遺伝的なものとして我々の体に備わっているというが、爬虫類大好き人間もいるので真偽のほどは定かではない。若い女性などの放射線への反応はこれに近いものがある。

確かなのはこれまでも常に言われてきた「放射線は目に見えず臭もしないから」ということだ。人が外部から得る情報の8割は目からというが、放射線に対して人は盲目と同じ。見えないということは実に恐怖感がある。さらに残りの感覚器官でも捉えられないとするとまさに透明人間なみで、これ以上の恐怖はない。お化けもはっきり見えないから怖いのだ。

機械化され遠隔操作や自動で動く原子炉でも、いざという時は手動で人が対応することが出来るのならよいが、放射線量が高くて人が近づけないとなると、これまた制御不可能になるようなものは本能的にダメだと思う人が多い。

人は他の動物と同じように子孫を残すという本能を持っているが、この本能に対しても放射線は胎児や幼児に特に有害なものとされ、この点を強調されることで人々に放射線に被ばくすることを異常なまでに避ける行動をとらせる。

また、人々はいつまでも無くならない葛藤、苦しみを本能的に恐れるものだ。オウム真理教の麻原彰晃は信徒に対して、「オウムを裏切ったり、脱会すれば無間地獄(大悪を犯した者が、死後絶えることのない極限の苦しみを受ける地獄)に落ちる」と叩き込んでいた。高レベル放射性廃棄物が何億年も放射線を出し続けると聞けば、一般の人は、本能的にそれは許されないと思う。

専門知識のない人は、絶対安全であると断言されない以上、自分や自分の子供を守るために出来ることは、他のことを多少犠牲にしても、放射線から少しでも遠ざかることしかない。互いに行動を確かめ仲間外れになることを警戒する。こうした判断や行動もいわば本能的である。これを咎めれば、咎めた側が世の中からバッシングを受けることは必至だ。

原発や放射線に対する否定的態度はこのように本能に根ざしているため、容易に変えることが出来ない。短所を克服するには、長所を大きくして短所を相対的に小さくすることが出来る。例えば温暖化などで原発の長所が相対的に大きくなるがその程度では恐怖心はなくならない。

原発反対派は活動の中で、この人々の本能的な拒絶反応を巧みに利用し、一定の成功を収めたと私は思っている。次回は、福島第一原発の事故後、それがどうなったかについて、私の考えを述べることにする。

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