日本エネルギー会議

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福島のこと

以前、福島県は東北第一の工業県だと書いたら、それは知らなかったという反応があった。福島県は面積が全国でも三番目に大きな県であり、福島第一原発の事故の直接的影響(この言い方は物議を醸し出さないとも限らないが)を受けた浜通り地方は面積にして数分の一、人口もこれまた数分の一である。さらに、その浜通り地方においても、原発立地とその隣接自治体がある双葉郡(相馬市、南相馬市、いわき市を除いた、浪江町から楢葉町に至る部分)は浜通り地方のさらに数分の一に過ぎない。全県の人口からすればおよそ二十分の一になる。

福島県のGDPや就業者の多くが原発のある浜通りではなく、中通りやいわき市、会津若松市に集中しており、事故後はさすがに風評被害などもあって生産が落ち込んだが、その後は復興景気もあって県の経済統計を見ても電気・ガス・水道業以外は急速な立ち直りを見せている。

相変わらず10万人を超す避難者がいて、メディアの伝える県内ニュースも半分以上は原発関係だが、中通り、会津の人々の生活や生産活動は昨年あたりからはまったく平常通りと言ってもよい。むしろ不動産や建設関係は一種のブームといってもよい状態だ。

全県民の二十分の一が避難しているに過ぎないが、問題はその避難指示が事故から3年経っても続いていることが、県政や県民の気持ちに影響を及ぼしていることなのだ。もちろん浜通り以外にも除染が進まず苦戦している福島市などの問題はある。

従来、福島県の政治経済は中通り地方を中心に回っていた。浜通りにはいわき市と南相馬市が独立した二つの大きな存在があって、間にある双葉郡の町村は原発によって経済的に支えられてきた。三年前の原発事故により、それが全住民避難とともに突然失われたために、浜通り地域に対して県が全面的に支えて行くしかなくなってしまった。廃炉、住民の帰還、産業の復興にこれから何年あるいは何十年もの時間が掛かる。それを糧にして廃炉となった原発が再びこの地域を支える構図が復活するのではないかとも思われる。既に現場の作業員の数は7000人と事故以前のレベルに近づいている。

その過程では、除染や放射性廃棄物の中間貯蔵、農林水産業の試験操業、賠償の駆け引き、関連死や健康問題、風評被害の再発、廃炉のトラブル、汚染水のコントロールなどさまざまな問題が持ち上がり、話題となって全国を駆け巡る。先日の「美味しんぼ騒ぎ」が良い例だ。

そのたびに、福島県が「原発によって、土地が放射能汚染され、住民が被ばくし、避難しなくてはならなくなったところ、いまだに危ないところ」というレッテルを貼り直される痛みを感じなくてはならない。廃炉で言えば、作業が順調に行かないことは、国や東京電力の問題であるだけでなく、福島県の復興がうまく行かないと同義語に取られるのだ。

世界で最も厳しい原発の規制は福島県の犠牲の基に定められたのであり、県内に原発はもういらないと言っている福島県民にとっては必要性も感じられない。県民の多くは各地の再稼働のニュースを聞いて、「こんな辛い経験は自分らだけでよい」「他の立地住民は福島のような目に遭わなければ、原発がどんなものかわからないのだ」と思っている。他の立地地域における再稼働を歓迎するようなニュースは、福島県民に自分たちの犠牲が活かされないという失望感と、今まで原発立地地域として仲間意識があった地域からの疎外感を味わせている。

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