日本エネルギー会議

  • 設立趣旨
  • お問合せ

会長の深慮遠謀

四国電力のホームページによれば、四国電力管内には水力発電所が58箇所ある。平均の認可出力は2千キロワットで、比較的小型のものが多い。大きなものでも2万から3万キロワットだが、一箇所だけ認可出力61万5千キロワットと格段に大きな揚水式のがある。これが高知県の伊予西条駅から30キロ山奥にある「本川発電所」。二位が蔭平発電所の4万6千キロワットだからその突出ぶりがわかる。吉野川水系で有効落差が528.4メートルあり、1982年6月に運用を開始した。大出力の揚水式水力発電所は東京電力、関西電力、電源開発などが100万キロワット級をいくつか運用あるいは建設中であるが、それ以外では珍しい。

四国電力の年表を見ると、1977年に伊方原発1号機(出力56万6千キロワット)が、1982年3月19日に、伊方原発2号機(同じく出力56万6千キロワット)が運転を開始している。これはたまたまではなく、当時の会長の強い意思で、原発の完成に合わせて大出力の揚水式水力発電所が建設されたと聞く。当時は四国電力の最大電力は夏場の300万キロワットだが、早朝にはこれが5分の1程度になる。伊方原発が2基稼働していると、夜間の電力が余ってしまうことで、大出力の揚水式水力発電所に原発から電気を送って電力の貯蔵をすることを考えたようだ。

現在でも、四国電力は電源に占める原発の割合は40パーセントを超している。以前、四国電力の方が、大晦日から正月にかけて、NHK紅白歌合戦が終わった後は、四国管内で伊方原発以外は停めてしまうので、万が一、伊方原発をスクラムさせたら大停電になりかねず、伊方原発の運転員の緊張感はすごいものだと話しておられた。また、四国電力は9電力で最初にフランスのような「原発の負荷追従運転」を1987年と翌年に運転試験しているが、実際に負荷追従運転が採用されたことはない。

四国のように全体の需要が少ないところで、大出力の原発を持つことの経営リスクの大きさを当時の会長は、公益事業の経営者としてしっかり認識されていたようだ。原発や大型火力の突然の停止に備えて、あるいは止められない原発で夜間に余る電力の処理に困ることのないように考えられたのが、蓄電池に代わる揚水式水力発電所だ。ただし、揚水式にすると揚水のために投入する電力の30パーセントは失われてしまう。

今日、どの電力会社も原発が長期停止している中、老朽火力発電所の突然の故障の可能性、不安定な再生可能エネルギーの増加による需給調整のやりにくさに悩んでいる。大型蓄電池の開発も必要だが、とりあえずは揚水式水力発電所を増やすことで、電力需給の安定を図ることが出来る。国も、国民が安心して暮らせるよう、やみくもに不安定なソーラー発電や風力発電を増やすだけでなく、揚水式水力発電所や蓄電池の開発の支援を同時に進めることが必要だ。

  • データベース室
  • エネルギーとは?
  • 世界と日本のエネルギー
  • 原子力の論点
  • 放射線と健康