日本エネルギー会議

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必要な国の支援

泊原発が停止してから2年が経ち、原子力規制委員会の審査の見通しが立たない中で、北海道電力は泊原発の緊急時制御室の建設など5年間で1600億円の追加投資を決めた。中部電力は既に1000億円を掛けて、浜岡原発に高さ18メートルの防波壁を完成しているが、このほどさらに高さ4メートルの構造物を追加している。日本原電、日本原燃を含め他社も続々と新基準適合のための追加投資をしている。原発停止により財務状況が悪化している電力会社にとっては、追加投資の大きさは胃が痛くなりそうな数字となっている。かつて上海の投資グループが北陸電力を買収しようとしたが、結局やめた原因が「原発を保有しているリスク」であったが、その判断にも一理あることがわかった。

もともと、反対派は原発の電気は国や電力会社の言うように安くないと主張していた。原子力業界は原子力推進が国策であるということから三法交付金、国の原子力開発予算、電力会社から地元への寄付金など発電原価に反映しないところで、国からさまざまな援助を受け続けてきた。

正確に言うなら、原発の発電単価はまちまちで、原発の出力、建設時期、追加投資額、稼働率によって一番安い原発と高い原発では相当の差がある。これを反対派も推進派も一概に原発は高い、安いという主張や、理論上や平均での話で済ましていたこと自体がおかしい。

今、電力会社は所有する原発、中でも運転開始後30年を過ぎた原発を追加投資しても再稼働するか、廃炉にするかの選択を迫られている。追加投資だけでなく、建設中の原発に今までかけてきた費用は、建設仮勘定として残ってしまいこのままだと原価償却出来ない。電力会社が日本原燃に投じてきた金も回収が難しくなる。今までは、ほとんど無条件に運転継続を選択してきた電力会社がこれからどう判断するかで、廃炉費用も含めた原発の発電単価の論争に一定の答えが出そうだ。

政府が原発を「重要なベースロード電源」と言うのであれば、廃炉中の原価償却を認める程度ではなく、さらなる経済的な支援策をやってもらわねば、電力会社は恒常的な財政難から脱出出来ず、送配電設備や旧式火力のリニューアルもかなわず、電気という最重要なインフラをガタガタにする恐れがある。電力会社としては、完全自由化を迎える前に、失われた体力を回復させておく必要もある。

政府が核燃料サイクルを堅持するというのなら、六カ所村の日本原燃を電力会社から買取り、国有化するくらいのことをして電力会社の負担を軽減するべきだ。廃炉で出る放射性廃棄物の行き先も電力会社に任せきりでなく、政府が目処をつけるべきだ。アメリカでは使用済燃料を政府が引き取ることで、電力会社は経済的な保障を得られている。

原発が減れば、金の切れ目が縁の切れ目で、メーカーや人材もそして地元も原発から離れていくことが容易に想像出来る。廃炉があるといっても、運転や定検ほどの経済効果は期待できず、地元としても原発に代わるものを考えざるを得ない。こう言っては身も蓋もないが、いままでは金があったからこれに群がる人たちもいて、経済界も地元も原発を支持してきた面もある。

原発が建設されはじめて数十年が経過し、地元政財界は、原子力村という共同体のメンバーの地位を確保している。原発が立地している地元が、おおむね再稼働に熱心なのはこのことの裏返しだ。廃炉の判断の過程で、今まで世話になってきた地元に対してどう説得するかも電力会社にとって悩ましい問題だ。これに関しても国は支援をしなければならないはずだ。

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