日本エネルギー会議

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原発の安全とは何か

福島第一原発の事故を経験し、私は「原発の安全とは何か」と考えざるを得なかった。国や電力会社や原子力の専門家が、地元の人々に説いていた「原発の安全」は、実は「原発の安全」のごく一部であったのではないかと思ったのである。

原発は強固に造られ、安全装置をたくさん備えており、運転操作もよく訓練された運転員が規則に従ってきちんと行なっており、万一の際も速やかに停止し、冷却し、放射能を外部に出すことがなく、したがって安全性が極めて高いというのが説明の内容だった。だが、福島第一原発の事故を見ると、その説明は原発の設備の話が中心で、「原発の安全」の一面しか触れていなかったと言える。例えて言えば、冬季オリンピックを説明するのに、現在のソチに限定して説明してきたようなものだ。冬季オリンピックは長い歴史があり、参加国、競技種目、ルール、会場設定、運営など、さまざまなことを説明する必要がある。

安全の対象は、故障や運転ミスから安全装置が働くまでのことだけでなく、安全基準から外部に影響を及ぼす過酷事故までをカバーしているべきものであるはずだ。また、「原発の安全」はプラントの事故対応に加え、過酷事故が起き、住民が避難しなければならない時にいかに減災出来るかも「原発の安全」の対象として考えるのが正しい。もしかしたら、風評被害まで含めて「原発の安全」を考えるべきなのかもしれない。この考えがなく、ごく限られた部分だけを考えていたため、実際に過酷事故が起きると、防災面、風評被害防止面ではほとんど準備がされていなかった。

基本設計にせよ、安全設備にせよ、現実に存在するものだけを安全の対象として、しかも枝葉末節的なところをあれこれ論じていたが、これも「原発の安全」を限定的に考えていたからだ。もともとアメリカで設計したものをそのまま地理的条件の違う日本に持ち込んだこと、諸外国でこの40年間にさまざまな改善、改良をどのように取り入れていくかなどを「原発の安全」の対象として幅広く考える必要があった。もちろん、放射性廃棄物の処理処分も「原発の安全」の対象とし、先送りすることがないようにである。

再稼働を前にいろいろな議論があるようだが、「原発の安全」について再び福島第一原発の事故以前と同じように、現実にある設備に限定して考えているのではと不安になる。二度と原発の事故を起こさないためには、この「原発の安全とは何か」をもっと議論し、関係者がその範囲や意味を共有していくことが大切だと考える。

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