日本エネルギー会議

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カタログと実際

ガソリン価格が高止まりしている今、一番売れている車種は軒並みハイブリッドカーになっている。だが、燃費が良いとの売り込みにつられて車を買った人の多くは、実際に走ってみるとカタログにあるようには燃費が良くないことを実感することになる。

他の電源と比べると燃料投入量に対するエネルギー出力が格段に大きく、使用済燃料燃料がリサイクルも出来る準国産エネルギー源。効率が良く発電コストが安い、ベース電源として長期間一定の安定した出力(稼働率80パーセント)が期待出来る。そのうえ、温室効果ガスの排出もない。発電にともない出てくる高レベル放射性廃棄物も一般のゴミに比べるとごく小さな容量で済む。とカタログに書いてあるのが原子力発電。福島第一原発の事故後は、世界最高水準の安全基準に合格したものだけを稼働すると政府が言っている。

太陽光、風、波など無限に存在する自然の力を電気に換え、温室効果ガスを出さず、むろん放射能とは無縁の地球環境負荷の少ないクリーンエネルギー。技術進歩はめざましく、今はコストが高いがすぐに安くなる。分散型ゆえ従来の原発や火力にくらべて災害や事故で一度にゼロにならない。火力発電や原発にとって代わる次世代の電源とカタログには書いてあるのが再生可能エネルギーによる発電だ。

実際はどうかと言えば、原子力発電は大型化によって出力はさらに大きくなったが、燃料のリサイクルは30年かかっても要となる高速増殖炉がまともに動いていない。また、使用済燃料の再処理工場も竣工していない。発電コストは、福島第一原発の事故後の再計算で、他の電源に対して優越するものではなくなり、さらに廃炉や放射性廃棄物の処分や事故時のコストなどが不明である。

長期間安定して動くという点でも、運営計画上はそうなっているが、我が国の実績を見ると良い時代で80パーセント。地震、事故、不祥事、地元の了解などにより年単位の停止があり、特にここ3年間はほぼ全基が停止したまま。原子力発電がスタートしてから累積稼働率は60パーセントを下回っている。「高レベル放射性廃棄物の体積が少ない」というのはカタログの話で、実際に30年も探して処分地の候補すら見つからないというのでは、体積が少なくても意味がない。世界最高水準の安全基準に合格しても、それはハードのことであり、動かす人や体制などソフトの面での合格点が取れなければ、半人前である。原子力発電をカタログ通りにするには、まだまだやり残していることが多い。

再生可能エネルギーの方に話を移すと、こちらでも実際をチェックして見ると、カタログに書かれているように理想的な夢の電源ではない。自然の力は確かに無限であるが極めて不安定で、書いてある出力も見掛け倒しだ。これを使うには蓄電池かバックアップ電源を必要とするが、そのことやコストのことは書かれていない。再生可能エネルギー電源が増えれば、系統に与える影響が拡大し、そのための手当も必要となる。また、分散型なので効率はどうしても落ち、コストも安くはなりにくい。騒音や景観や農林水産業との共存の問題もあり、かならずしも公害フリーではなさそうだ。ソーラーパネルは安くなるかもしれないが、これを設置して電気を利用するための費用は従来型の土木工事、電気工事なのでそれまで含めるとコストはなかなか下がらない。
原子力推進側も再生エネルギー側も、進んでカタログ評価作業をするとよいのだが、気がのらないようなら、ここはひとつ、消費者連盟かJASのようなところに、カタログからどの程度実際が外れているかを評価してもらい公表してもらうことが国民のエネルギー政策判断に必要だ。

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