日本エネルギー会議

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箱モノの魅力

福島第一原発のあった大熊町や双葉町に限らず、全国の原発立地自治体では、いわゆる箱モノが作り続けられてきた。その資金は三法交付金や、電力会社からの寄付でまかなわれていた。箱モノには維持費がかかり続け、自治体の財政を圧迫。そのために新たな交付金や寄付を求めるという悪循環となっていた。

地方では手っ取り早く地元に金をまわすのは公共事業が最適。地方には中小の建設業が多く、そこは有力な地方の議員のバックアップをすることで、仕事を獲得するという構図があり、住民も農業をする片手間として土木建築作業員として働いた。農家の主婦や年寄りまでが道路の旗振りや土木作業の手元として働くことが出来た。

建設は大手ゼネコンとなる場合が多かったが、地元中堅土建企業とのJVが組まれたり、下請に地元企業が政治家の力で入ることが多かった。十分な利益を確保出来た地元企業は事務所を新築し、経営規模を拡大し、さらなる箱モノを求めるようになったと同時に選挙では政治家を支援した。

建設が終わると、その施設には運営管理のための職員が地元優先で雇われた。そのなかで自治体の幹部自身が引退後のポストとして、あるいは首長の縁者などが管理者となることが多かった。広報施設や観光施設であれば、地元の若い女性を案内係として採用してくれた。施設のためには清掃、洗濯、庭園維持、設備の点検補修、警備など永続的な仕事が出るため、政治家のくちききで地元企業が下請となってそれを受注し、地元住民の貴重な働き口になった。

こうした関係者は原発推進側の大切な支持者であり、また選挙の時には大切な票田でもあった。政治家にとってはまさに箱モノは大事な利権であり、地元の商工団体にとっても、箱モノは団体に加盟する地元企業を増やし育成する効果があった。

箱モノを作ることは、金の使い方として、地元の産業構造、就業構造、年齢構成に最も適した方法であった。箱モノは数千人から1万人の地元自治体には不相応に大きく立派なものであり、華々しくオープンするが、翌年にはすぐに閑古鳥が鳴くことが多かった。それは自治体自らが考えた構想ではなく、多くの場合大手の商社系の調査会社、大手広告代理店の作った見栄えのよい作品であり、地に足がついているものではなかった。

それでも、つい最近までは箱モノは作り続けられてきた。地元にとって、そこから地元振興を図ろうとするものではなく、箱モノ自体を造り建設業に金を落としてもらうこと、出来上がつたらそこで雇用してもらうことが大きな目的であったからでる。

こうして人口数万人の福島県双葉郡の原発立地4町で、隣の町に負けまいと競争でに造られた箱モノは、それぞれが人口10万人規模の市でも持てないような巨大、壮麗なものであった。利用率低迷と維持費の増加に悩んでいたそれらの箱モノは、福島第一原発の事故の際に、原発に近すぎて避難所にもなれず、事故から3年後の今もまだ避難区域内に放置されている。これから各地で、原発再稼働の際に、国や電力会社は地元に対して何らかの経済的な恩恵を与えようとするかもしれないが、たとえ地元が要望したとしても、箱モノづくりには慎重になるべきだろう。

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