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免震重要棟

オウム真理教事件で、「サティアン」とか「ジーバカ棟」などという耳慣れない単語が毎日のように報じられた結果、一般の人にもすっかりその言葉が記憶に定着したが、福島第一原発の事故では、「免震重要棟」「ベント」などの言葉が一般化した。その「免震重要棟」について、亡くなった吉田所長をはじめ、多くの関係者がもし「免震重要棟」がなかったら、なすすべがなかったと語っている。原子力規制委員会は、新基準に基づく審査で、各原発に免震重要棟があることを求め、各電力会社はその建設に向かっている。

東京電力が中越沖地震の経験から、柏崎刈羽原発ばかりでなく、福島原発にも免震重要棟を建設した。それが今回の事故が破滅的に拡大するのを防いだ。これに対して各電力の動きは鈍かった。原子力安全・保安院も何を考えていたのだろうか。

以下は昨年6月10日付の東北電力プレス発表だ。
当社は、東京電力株式会社福島第一原子力発電所の事故から得られた知見等を踏まえた緊急安全対策等に加え、ハード・ソフト両面から安全性向上に向けた取り組みを進めております。この結果、既に福島第一原子力発電所と同様な事故を起こさない安全レベルを確保したものと考えておりますが、さらなる安全性向上を図るため、東通原子力発電所における免震重要棟の設置について検討してまいりました。

今般設置する免震重要棟は、大規模な原子力災害が発生した場合の現地対策本部となる指揮所(緊急時対策所)機能を強化するために設置する免震構造の建物で、平成28年3月の完成を予定しております。

今、各電力が免震重要棟を建設していることは、それはそれで結構なことだが、原子力規制委員会が再稼働の条件にしたから建設しているのであればそれはおかしい。

東京電力以外の電力会社でも、近年、安全文化の向上をグループ全体の課題として唱えていた首脳が、福島第一原発の事故前までは、自ら安全文化の具現化を進める一歩が踏み出せなかった。中越沖地震の後で、東京電力以外の電力会社は何故、免震重要棟の建設を検討し決断しなかったのか、その内部対応の経過をしっかり調査分析したのかと問いたい。その調査結果も公表すれば、地域住民も納得するというものだ。

この件で原子力安全・保安院が指導力を発揮しなかったのは、例の貞観地震情報のように、電力会社側の抵抗に負けてしまったのか、共謀して結論の引き伸ばしをしたのか、今からでもよく調べた方が良い。原発立地地域からしてみれば、事故対策の切り札とも言える免震重要棟なしというのは、まったく住民の安全をないがしろにした話だからだ。

ところで、免震重要棟は施設であり、基本設計が出来れば、ゼネコンとメーカーが建設してくれる。その中で対応する所員や故吉田所長がテレビ会議で「もっと支援体制の充実を」と叫んだ本店原子力部門の職員の実戦的能力を高める教育訓練は、最大の課題でありこれをどのようにしようとしているのが、いまもってはっきりとしないのは遺憾である。上記の東北電力のプレス文でも、ハード・ソフト両面の対策といっているが、ソフト面は具体的ではない。3年後にハードは出来るのだが、それまでになんとかなるのだろうか。

原子力規制委員会は免震重要棟の検査をするだけで、対応能力も検査するようなことを以前言っていたように記憶しているが、その点はどうなったのだろう。肝心な点がいつものように、すり抜けて行くような気がしてならない。

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