日本エネルギー会議

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緊張感の維持に向けて

関係者のほとんどが日本では起きないと考えていた原発の過酷事故が2年9ヶ月前に福島第一原発で起きた。国も東京電力も、まったくの不意を突かれた形で対応が始まり、その結果、官邸、役所も本社、現場も大混乱となった。従来、電力会社のメンテナンス部門は、原発の非常用機器の定検をしながら、この原発が稼働している間は、この機器が使用されることはないだろうと考えてメンテナンスを実施したり官庁試験を受けたりしていた。

中央制御室の運転員たちは、日頃の訓練のおかげで、想像を絶する困難な事態にもかかわらず、十分評価出来る対応をした。訓練では大地震の揺れで、操作盤にしがみついていなければならないシチュエーションはなかったが、中央制御室が真っ暗になるような事故想定は含まれていた。いかに訓練が大切かということだ。

あの事故をきっかけに、全国の電力会社の本店や原発ではさまざまな改善が行われ、年が明ければ、いずれどこかの原発が再稼働すると思われる。その時、現場は極度の緊張が走るはずだ。過度の緊張でミスが出ることが心配だが、それ以上に気をつけなくてはならないのは、関係者が今まで以上に過酷事故対策が実施されたことを承知しているために、前にもまして過酷事故など起きようがないと心の中で考えることだ。現実問題として、何ヶ月も何年も過酷事故は起きないだろうから、狼少年の話のように、だんだん緊張感を持続することが難しくなる。

ごく僅かではあるが、起きる可能性のある事象に対して、継続的に注意を払い続けるのは容易なことではない。これをどのように維持していくかは、国や電力会社、原子炉メーカーにとって大きな課題となる。安全活動を推進する人々の間では、これで大丈夫と確信した瞬間から事故の可能性がどんどん大きくなると言われている。浜岡原発では、ずいぶん以前から「負の遺産の展示」をやって、社員教育に役立てていた。(残念ながら水素爆発の展示はあまり太くない配管が、花びらのように破断したものであり、福島第一原発の水素爆発の様子をイメージするには程遠いものだが)

緊張感維持のために、全基廃炉が決定した福島第一原発を、今後、国、電力会社、メーカーなど関係者が必ず一度は訪れて、原発の過酷事故の実像を目に焼き付けておくようにすることも一案だと考える。

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