日本エネルギー会議

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今年最後の一時帰宅

先頃、避難指示解除準備区域では、暮れから正月で最長15日間の宿泊を伴う帰宅が認められたが、私の家のある帰還困難区域では認められず、昨日は今年最後の日帰りの一時帰宅となった。最近では月に1回だけ認められている一時帰宅の希望者が少しづつ減少している。

一時帰宅するにはフリーダイアルで事前にアポを取る必要があるが、この業務を三井物産グループのテレマーケティング企業の株式会社「もしもしホットライン」が内閣府から請け負っている。この対応をするオペレーターがマニュアルどおりで融通が全く効かないし、気も効かない。

マイカーで立ち入りを申請すると、バスでの一時帰宅の日、中継基地が休みの日などがたくさんあって、希望する日にちのアポがなかなか取れない。内閣府の業務を請け負っているとオペレーターが言うので、「改善を申し入れたいので内閣府の担当の電話番号を教えるように」と求めても、かたくなに「それはお教え出来ません」と答える。どこかで経験した対応と似ていると思ったら、この企業は、言葉は丁寧だがマニュアル通りの答えしかしない東京電力の賠償の電話窓口も請け負っていたのだ。

帰還は中継基地まで行って、許可証を見せて個人線量計をもらういつもの手順で行った。途中の道は除染関係の車と人があふれていて、広野町の四号線沿いのコンビニはあいかわらずの繁盛ぶり。ガソリンスタンドもいくつか営業しているが、他の商店は全滅。富岡町消防署の前にあるバリケードを開けてもらい入域するが、道路の補修は相変わらず出来ていない。電気も水もない。

一ヶ月ぶりに鍵を開けて玄関を入ると、土間にちいさなネズミの死骸。下駄箱のなかには大きなネズミの糞。どこかの小さな隙間から家の中にネズミが侵入したようだ。中は少しかび臭い。窓や戸を開け放って空気を入れ替え。生垣のサザンカが伸び放題でピンクの花を無数につけている。

絶えず防災無線の放送が行われている。「町内の立ち入りはいずれの区域も午前9時から午後3時まで。3時には帰還困難区域のゲートが閉まるので、それまでに区域から退出するように」「焚き火は火災の原因となるのでしないように」「ゴミを集積所に出す場合に選別をして」などと絶えず繰り返すのが聞こえる。最近、ゴミの集積所が復活したのは大きな進歩。不用品や地震で壊れたもの、長い間放置したものなどを大量に車に積んで集積所に運んで廃棄した。回収は地元土建業者が請け負っている。

庭は牛などの糞が少なくなっている。庭木は全体的に元気をなくしている。もちの木などいわゆる庭木は完全にダメになっている。ミドリ摘みをしてやれなかった二本の枝ぶりの良い松はついに枯れ、柘植の木は形を崩して伸び放題に。全体に熊笹の生えている所が着実に広がっている。コケは全滅。

草は10月に東京電力のボランティア社員に刈ってもらったので、今はそれほど伸びていないが、玉仕立てのツツジの中から雑草が生えているのは取りにくい。

鳥ばかりが騒がしく、隣近所はあまり一時帰宅していない様子が見て取れる。今回は、3時間滞在で8マイクロシーベルト 防護服は着用せず、靴カバーだけしていたが、帰りの基地での汚染検査は問題がなかった。

私は数年後に戻れるようになっても、おそらくここは別荘がわりになりそうだ。夏は涼しく、冬は暖かいからその季節だけ戻ることは考えられる。だが、木造の建物はこのまま数年経つと傷みが出てきそう。給湯設備などは全部入れ替えが必要だ。中通りからここまで来るのは、高速道路を使っても一時間半掛かる。歳をとってだんだん運転が辛くなってきている。避難先に家を買って落ち着くと、恒例の桜まつりなどの他は、もうあまり元の町にはもどらない人が多くなりそうだ。

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