日本エネルギー会議

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避難者の関心事

福島第一原発の事故で避難している人にとって、一段落した賠償問題が今後どのようになっていくかは大きな関心事だ。東京電力の賠償のもとになる基準を作成している原子力損害賠償紛争審査会は先頃、精神的苦痛に対する一人月10万円の賠償を区域解除後一年間で打ち切りとすることを決めた。これから来年に向けて解除が予定されている避難解除準備区域の人たちは「いつまでも避難しているわけにはいかない」ことになる。戻る、戻らないは本人の自由だが、避難していても一銭にもならないし、住居費もかかってくるので、自宅を修理したりして戻る準備に入る人が増えそうだ。戻った場合に、インフラが未整備、雇用が確保されていない、買いもの出来るところが少ないとなれば、不満が高まる。不便な生活に対して「帰還手当」の支給をしてもらいたいというのが本音だ。

続いて居住制限区域の人たちは、次は自分の番だと思うが、既に避難先に生活拠点が出来上がってしまった場合には、今までの月10万円の賠償でゆとりがあった生活を引き締めなくてはならないと考えるはず。また、戻ったにせよコメや野菜は作れず、雇用が確保されるとは限らないので、生活は事故前より厳しいものとなるはずだ。

帰還困難区域の人たちは、既に多くが避難先などに持ち家をしている、あるいは計画中であり、「戻らないと決めている」パーセンテージも高いので、区域解除は少しでも遅くして、賠償を長くもらいたいと思っているのが自然だ。

紛争審査会が、古い家の賠償について、新たに家を買えるように賠償額のかさ上げを検討しているが、それに対して自分にはどの程度の恩恵となるか関心のあるところだ。環境省が決めた中間貯蔵施設候補地については、まもなく大熊、双葉、楢葉の三町が受入を表明することになりそうだが、該当する土地の所有者はとっくに帰還を諦め、また不動産の賠償を受け取り済だが、今後どの程度の額での買い上げになるか注目している。買い上げ対象とならなかった中間貯蔵施設の周辺の土地の所有者にとっては、施設は単なる迷惑施設にすぎず、土地の評価減につながると不満を持っている。賠償によって所有権は東京電力には移転しないと決められているが、その後固定資産税や住民税が取られるのだろうか。そんな馬鹿な話はないと思っている。

避難に伴い病気になった人や持病が悪化して、賠償を得ている人たちも、これからも東京電力が賠償を支払い続けてくれるとは考えにくく、いつまで賠償してくれるのか、最後はどのような形で打ち切りとなるのかわからない。既に「避難が長期化して症状が安定している」などの東京電力の勝手な理由で一方的に賠償打ち切りとなっている例が多く、今度もいきなりの打ち切りになるのではと心配している。

既に新たな地に家を買って住民票も元の町から移した人がいる。その人たちはいまだに賠償対象となっており、さらに免税、高速道路無料などの措置も今は受けられているが、時間が経てば何時の時点か避難者と見られなくなり、恩恵を受けられなくなるのではないかと思っている。

ほとんどの人は東電の示した賠償手続きに乗って賠償を受けたが、一部の人はADRや裁判で頑張っている。一般の避難者からすると、その人たちがどのような成果が出ているのかを知りたいところだが、中身はあまりわからないようになっている。自分は東京電力のいいなりに賠償を受けてきたが、それで損をしたのではないか、時効が10年に伸びたので、自分も今後何らかの追加賠償を得られるようにしたいが、どうしたらよいか分からないのが現状だ。

年月が経過するとともに、残してきた家は傷み、朽ち果てるのは時間の問題だ。それにネズミや野生動物の害もひどくなっている。そのまま見ているしかないのか、取り壊しは国や東京電力がやってくれないものかと考えている人も多い。いくら賠償をしたといっても、こんなに荒らしたままにしておいて良いのだろうかという疑問だ。

他の公害などの賠償に比べると今回の賠償は良い方だと思うが、公共事業などの立ち退きに比べると良くない。故郷を失ったこと、コミュニティを破壊されたこと、人生を狂わされたことなどはこれからも一生ついてまわる。それに対する償いが今までの賠償で終わりということで済まされてしまうのか、避難した人たちの疑問は深まりつつある。

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