日本エネルギー会議

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思わぬつまづきの原因

原発を安全に使う条件はいろいろあるが、それらは瞬間的に満足できるだけでなく、常に一定のレベルをクリアー出来ていなければならない。原子力規制委員会の審査をパスしたからといってそれだけでは、大学入試を通ったのと同じで、そのあとも真面目に勉学し続ける必要がある。原発の場合、こうしたチェックというものは、何年に一度受ければよいというものではなく、原発を運営する組織自らがたえず目を光らせていなくてはならないものだ。原子力規制庁の係官が原発に常駐していても、問題を必ず把握出来るとは限らない。

原発を運営する組織が、自らを律する努力を継続するためには、動機(俗に言うアメとムチ)を与えることが必要だ。しかし、我が国の原発では、そのアメとムチにメリハリが効いているとは思えない。国の強力な支援の下に原子力開発を推進していること、原発を運営している電力会社はどこも地域独占の大企業であり、最近はともかく、従来は財政的には恵まれてきたこと。電力会社は長年、原子炉メーカーや工事会社にとって上顧客であったこと。それと同時に、地元の自治体や住民にとっても原発は打出の小槌のようなありがたい存在であったことなどから、そこには緊張感というものはあまり感じられなかった。

もちろん、原子力が資源小国の重要なエネルギーであり、また原子力が資源問題、環境問題からして将来のエネルギーの切り札であると信じる原子力関係者は、原子力に係わる業務に就いていることを誇りに思い、それを最大の動機と考えてもいるが、それだけでは動機が不足している。

資本主義国のアメリカが共産主義国のソ連に勝てたのは、科学技術を発展させ、軍事的経済的優位を保ち続けることが出来たからであり、資本主義こそが科学技術を発展させるのに今のところ、一番優れた仕組みだ。資本主義がやったことは市場原理によるアメとムチを巧みに使ったことであり、共産主義ではこれがうまくいかなかった。

資本主義の下では、どの産業でも激しい競争が繰り広げられ、トップ企業といえども少し油断すれば、たちまち業績が悪化して市場から退場させられ世の中に存在出来なくなる。関係者には絶えず緊張感が働くが、原子力産業はそうではなく、まず、「その存在がありき」であった。工場である発電所の稼働率が50パーセントを切っても、何年も稼働しなくとも、その存在は消費者と納税者の負担で辛抱強く守られた。国営であれば、受けたであろう世間からの批判も、国策民営という形態によってかわすことが出来た。このように資本主義国でありながらも、原子力だけは共産主義でやってくることが出来た。自らの努力で、なんとか自らの存在を守っていくのではなく、最初から存続を保証されてあらゆる面で優遇されてきたことが、原子力の現在の予想外のつまづきの遠因になっていると思えるのである。

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