日本エネルギー会議

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セシウムの呪い

避難生活も二年半になろうとしている。避難生活が長引いているのは、政府が区域再編をして、自宅のある行政区を帰還困難区域にしたからだ。その区域分けは、航空機による放射線量の測定と行政区や大きな道路、川などを勘案して線引きをして決められた。同じ行政区内で賠償に差が出ないようにとの配慮もあったようだ。

帰還困難区域に対する除染はまだ行われず、計画さえもはっきりしていないが、月一回許される一時帰宅の際の自宅の庭の線量は一年くらいで三割方落ち、その後はあまり変わらないという状態が続いている。現在は、3~4マイクロシーベルトである。雨樋の落口の小石も以前は50マイクロシーベルトもあり驚かされたが、現在は半分以下になっている。

セシウム134の半減期は2年、セシウム137の半減期は30年であるが、ヨウ素のように何時間、何日というわけにはいかない。除染によっても取り除けなかったセシウムは半減期を待つことになる。除染した土壌なども仮置き場や中間貯蔵施設に置いておくが、それらも同じように半減期を待つことになる。地元の人々は、中間貯蔵施設で30年も経てば、他に候補地も見つかるはずもなく、十分に線量が低いから施設がそのまま最終処分場に変わるのだと真面目に考えている人もいる。

住民の帰還や地域の復興を妨げている要素はいろいろあるが、セシウムの半減期が長いことが、その一つとなっていることは明らかだ。政府が年間1ミリシーベルトになるまで除染をすると見栄をはったのがいけなかったのだが、セシウムの半減期は、呪いのように放射能汚染した福島の土地や汚染の心配のある福島の産物のイメージを人々に持たせ続ける。NHK福島放送局はいまだに、天気予報の後で、各地の放射線量についてレポートをしている。

その一方で、国や原子力業界に対してはセシウムの呪いは、福島第一原発の事故の原因究明が進まないことや原発再稼働に対する国民の厳しい目を支える役割を果たしている。先日の終戦記念日のように、福島第一原発の事故も人々の脳裏から徐々に去って行くことに対して、セシウムがそうはさせじとしているようにも見えるのである。

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